どんど焼きは日本の国民的行事、そして世界の共有文化遺産

    小正月行事「どんど焼き」の全国・国際調査集計(令和2年版)

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2020/3/13更新
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【小正月行事「どんど焼き」新着トピックス篇】


〇タルジブ焼きでコロナウイルス退散祈願(韓国)

 韓国京畿道(キョンギド) 竜仁市(ヨンインシ)の 韓国民俗村は2020年3月22日から4度にわたって「コロナ19ウイルス終息祈願祭」を開き、 野外会場で観覧客とともに小正月行事「ダルジブテウギ」(タルジブ焼き)を実施するということです。タルジブ焼きは「月家」を燃やして厄払いとこの一年の幸福を祈願する行事。
 コロナ19終息祈願祭は3月22日から4月12日まで毎週日曜日午後4時から臨時会場で開催し、コロナ感染症問題が早く終わるように祈願します。疾病予防のための一種のお守り「セファ」を親子で作る行事も行います。
 韓国政府と地方自治体はコロナ19予防のために集会禁止と学校休業などを勧告しています。 特に韓国民俗村がある京畿道はネットカフェ、カラオケなど1万5千余個店を対象に密接利用制限行政命令まで発動しています。しかし、韓国民俗村では「コロナ退散を願う心で用意した。観覧客のマスク着用を必須にして会場に手洗浄剤を備えて防疫も徹底する」と行事を行う決意を取材記者に語ったということです。
 しかし、SNSなどの“ネチズン”からは「このような祈願祭をせずに人を集まらなくさせるのが疾病退治する道である」などと批判の声が上がっているということです。(出典:韓国オーマイニュースohmynews.com)(2020年3月21日更新)

〇ナマハゲがいるところに人形道祖神はいない

 秋田魁新報電子版は2020年3月16日付けの「ナマハゲがいるところに人形道祖神はいない」と題するコラム記事を掲載し、秋田の正月、小正月行事の特色である「ナマハゲ」と「人形道祖神」について、「ナマハゲが行われる地域には人形道祖神を祭る風習がない」という現象について考察しました。
 このコラムは郷土史研究家の小松和彦氏が執筆する「新あきたよもやま」。その記事によると、全国的には秋田の伝統文化行事は大晦日や小正月に人が仮装して神の化身となるナマハゲが知られています。ナマハゲの最も古い記録は文化8年(1811)の小正月に菅江真澄が男鹿で記録した「牡鹿乃寒かぜ」にありますが、それとは別に、人形道祖神が子供たちと町を巡行する小正月行事があったことも当時の資料に出てくるということです。
 人形道祖神はカシマサマ、ショウキサマ、サイノカミなどと呼ばれます。ワラや木で作られ、サイノカミ祭りの御神体となります。人形道祖神は大館市、能代市を中心とした県北内陸部、そして仙北市から湯沢市にかけての県南内陸部を中心に分布しています。これに対して、ナマハゲ行事は男鹿半島を中心に能代からにかほ市にかけての沿岸部に分布し、ナマハゲと人形道祖神行事が共存しないということです。
 サイノカミ祭りでは、子どもたちが男女2体(じじ、ばば)の人形道祖神(サイノカミ)を作り、オドッコ(お堂)に入れて飾ります。祭礼では体の大きな子供がオドッコを背負い、子どもたちは集落の一軒一軒を周ります。玄関から入るとサイノカミを正面に向け、木を削って彩色した男根形の棒である「ほたき棒」で床を突きながら祝い唄を披露するということです。
「サイノカミの御詠には、戌亥の隅に甕7つ、男の子も13人、孫こ、曾(ひ)こ、玄孫(やしゃらご)、玄孫の代まで(中略)御簾(みす)の旦那の石(ごく)獲れは、千石万石数知れず、四方の蔵からは、善と金ザックラザックラ湧くように湧くように」
 ナマハゲも集落の一軒一軒を周りますが、人形道祖神行事と共存しないという理由についてコラムでは、「両者に共通する祖霊神としての性格が重なるためではないか」と考察しています。
 なお、富山県下新川郡入善町上野邑町(うわのむらまち)地区の小正月行事「塞の神まつり・邑町のサイノカミ」(国の重要無形民俗文化財)でも、子どもたちが男神、女神と墨で書き一対の木偶人形(デクノボー〔塞の神〕)を持って、集落の家々を周り、その道中に大声で「塞の神じゃ、大神じゃ、じいじもばあばも、ぼくぼくじゃ、来年もきゃ、十三じゃ、にょうぼう、うんだら、しょうぶした・・・」と唄います。秋田サイノカミの祝い歌と同様に人形の塞の神を持って「13」という数字が唄われます。なぜ「13」なのか、意味は不明です。  (2020/3/20更新)

〇山梨県教委が「地域文化財継承の危機」に警鐘

 山梨県教育委員会(学術文化財課)は、2020年3月13日、少子高齢化や過疎化により、文化財(有形文化財、無形民俗文化財)の保存や担い手不足による継承が危ぶまれているなかで、「山梨県文化財保存活用大綱」(素案)を発表し、一般県民からのパブリックコメントの募集を開始しました。コメントの提出期限は3月26日。詳細は山梨県教育庁公式サイト
 https://www.pref.yamanashi.jp/gyoukaku/public/gakujutu/bunkazaitaiko.html

   山梨県の文化財保存活用大綱素案は、文化財行政のあり方や文化財の保存・活用の基本的な方向性について以下3目標が設定されました
 1 地域の多様な関係者が共に支える文化財の保存・継承の取り組みを促進する
 2 文化財の魅力や価値の共有による地域のアイデンティティの確立を促進する
 3 文化財を活用し、来訪者を増加させる地域の魅力づくりを促進する

 こうした方向性の背景にある問題意識について、文化財保存活用大綱素案は次のように説明しています。
【文化財の継承・維持管理に関する現状について】
●有形文化財の所有者や管理者が高齢化あるいは代替わりしたことにより、継承が難しくなってきている
●無形民俗文化財は、後継者不足により、地域における存続が危ぶまれている
●経済的理由や担い手不足により、十分な維持管理や防災・防犯対策が難しくなってきている

 山梨県教育委員会が県民に提起した「地域文化財継承の危機問題」は、地域資料デジタル化研究会の小正月行事どんど焼き国内、世界調査においても顕著に現れています。
 新潟県十日町市大白倉の「バイトウ」は、甲信越地域などにみられる、小正月行事の「おこもり小屋(年籠り小屋)」として知られていますが、その中でも大白倉のバイトウは最大規模のものです。
 2020年は暖冬少雪の影響で2月23日、バイトウ行事が行われ、集落中心部の空き地にケヤキとわらで高さ約9メートル、底部の直径約7・5メートルの円錐形の小屋をつくりました。夜には住民や集落出身者、市観光協会職員ら延べ40人余りが参加して酒宴が行われ、その後小屋に点火され、燃え上がる火柱で今年の稲作の豊凶占いが行われました。
 しかし、この大きなバイトウ作りも2020年が最後だということです。大白倉集落でも少子高齢化の影響により、小屋作りの労力が確保できず、来年からは「身の丈にあった」小規模な小屋に変更されるということです。

   一方で、地域の少子高齢化のなかで、小正月行事を地域資源としてまちづくりへ活用しようという機運の高まりが、山梨県北都留郡丹波山村の「お松引き」で見られます。お松引きは各家庭から集めた松飾りを、高さ約5メートル、重さ約2トンの巨大な木製のそり「修羅(しゅら)」に積み上げて村内を引き回し、新年の無病息災、五穀豊穣を祈願する行事です。村内の高齢化により、一時は祭礼の存続が危ぶまれていましたが、地域の魅力を伝えるオープン行事として、観光客も参加できる仕組みを作り上げました。観光協会がお松引きの費用確保のため「ワンコイン(500円)寄付」を募るなどして、行事の賑わいを取り戻しています。
 このように、地域の無形民俗文化財を観光まちづくりの地域資源として最大限に活かしている自治体の成功例としては、秋田県横手市の活用事例が顕著です。横手市の場合、 小正月行事の「横手の雪まつり/かまくら・ぼんでん」を市民総参加のまちづくり行事ととらえ、雪の秋田を代表する国際的観光行事として定着しています。観光客の入込が30万人以上にもなり、外貨獲得のインバウンド観光の成功事例としても知られています。
 このほか、秋田県では湯沢市の犬っこまつり・どんど焼き、仙北市の「上桧木内(かみひのきない)の紙風船上げ」など、各地で小正月の無形民俗文化財が地域の魅力を外部に発信する観光行事として成果をあげています。

〇福岡、奈良、マジョルカで“鬼の火走り”

 2020年1月の小正月の時期に、日本とスペインのマジョルカ島で、鬼(悪魔👹)が出現し、松明や花火で厄除けを行う「鬼の火走り」が行われました。以下、日本とスペインの3つの調査事例では、共通点として、(1)角がある鬼、悪魔が主役(2)鬼ととともに火が走り回る(3)太鼓、銅鑼など鳴り物が乱打される-の3点があげられます。なぜ、日本とマジョルカで類似の行事が同じ時期に行われるのか、理由は不明です。

   【福岡久留米の鬼夜】
 約1600年の歴史があると伝わり、日本三大火祭りの一つとされる国重要無形民俗文化財「鬼夜(おによ)」が2020年1月7日夜、福岡県久留米市大善寺町宮本の大善寺玉垂宮(たまたれぐう)で行われました。鬼夜は巨大なたいまつ(直径1メートル、長さ13メートル、重さ1・2トン)を境内で引き回す神事で、鬼夜祭の主神である鬼面尊神を安置して神殿で神事を行い、燧石(ひうちいし)でとった御神火(鬼火)を護り天下泰平、五穀豊穣、家内安全、災難消除を祈願します。
 午後9時過ぎ、約300人の締め込み姿の氏子が掛け声とともにたいまつ6本に点火し、境内は火花と爆竹音で壮観な火の海となります。燃えさかる六本の大松明は、銅鑼や太鼓が乱打されるなか、裸の若者たちがカリマタとよばれるカシ棒で支えあげて火の粉を浴びながら神殿を時計廻りにまわりました。地元では火の粉を浴びると無病息災で1年を過ごせるとされています。(この項毎日新聞WEB福岡、大善寺玉垂宮公式サイト)
    
大善寺玉垂宮の鬼夜イメージ(google画像検索「鬼夜」による)  

   【奈良の念仏寺鬼はしり】
 奈良県五條市大津町の念仏寺陀々堂(だだどう)で2020年1月14日夜、鬼たちが振り上げる大たいまつの炎に1年間の無病息災を祈る「鬼はしり」(国重要無形民俗文化財)が行われました。鬼が人々を守る祖霊を表すという古い信仰を伝える行事。鬼の面には「文明十八年」(1486年)と墨書してあり、500年以上の伝統があるとされています。
 堂の板を棒でたたく音が鳴り響く境内で午後9時過ぎ、父と母、子の3匹の鬼が登場。重さ約60キロのたいまつを振り上げながら堂の縁を回りました。
   
陀々堂の鬼はしり(母鬼)2018年 BY A photographer, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=67131759による

【マジョルカで悪魔の火祭り「コレフォック」】
 スペイン・マジョルカ(Mallorca)島のパルマデマジョルカ(Palma de Mallorca)で2020年1月26日夜、サンセバスティアフィエスタ2020のフィナーレとなる伝統の火祭り「コレフォック(Correfoc)」が行われました。悪魔に扮(ふん)した参加者らが、花火やたいまつを振りかざしながら、太鼓を打ち鳴らす部隊とともに街中を練り歩きました。善と悪の戦いを表現し、悪魔が悪霊を追い払う行事とされ、火の粉をあびると厄(悪霊)払いができるとされています。
 コレフォックパレードでは、7つの「ディモニス(悪魔)」のグループ、3匹の怪獣グループ、太鼓のバトゥカダなど478人が参加し、6,800台の吹き出し花火や松明が燃やされ、街中が火と煙の海となり、轟く爆竹、ドラムの乱打で「この世の地獄の様相」となりました。お祝いの総予算は22,000ユーロということです。
 コレフォック主催者は、観客が大量の火の粉で頭や顔を火傷し、衣服を焦がすなど危険すぎるイベントのため、観客に火の粉から身を守るために綿の服、ズボン、長袖、耳栓の着用、パレードから安全な距離を保つことを呼びかけたということです。(この項Majorca Daily Bulletinなど)
  
マジョルカのコレフォック火祭り(グーグル画像検索結果「Mallorca+correfoc」による)

【福岡大宰府の鬼すべ】
 一方、福岡県太宰府市の太宰府天満宮では2020年1月7日夜、勇壮な火祭り「鬼すべ」が行われました。平安時代の986(寛和2)年に始まったとされる厄よけと招福を祈る神事。約300人の氏子が、鬼を追い払う「燻手(すべて)」と、守る「鬼警固(けいご)」に分かれて攻防を繰り広げました。
 「鬼じゃ! 鬼じゃ!」の掛け声を上げながら、氏子たちが鬼すべ堂前に集合。午後9時すぎ、わらや松葉に点火されると、燻手は鬼をいぶし出そうと大うちわで煙を堂内へ。鬼警固は煙を外に出そうと板壁を打ち破った。やがて現れた鬼は、つえで打たれて退治されたということです。(この項:西日本新聞電子版)(2020年3月3日更新)  

〇ブラジルのカーニバルが閉幕

 欧州の春の祭典を真夏に祝う伝統的行事であるブラジルのカーニバルは、国内各地で2020年2月21日夜に開幕、カーニバル(謝肉祭)休暇の行事は26日フィナーレを迎えました。期間中は有名なリオデジャネイロやサンパウロほか北東のサルバドールやレシフェ、オリンダなど各地で人々がきらびやかに仮装してサンバ踊りや山車の大掛かりなパレードを繰り広げました。
 ブラジルのカーニバルは、欧州のキリスト教会の復活祭に先立つ春の祭典と同じ日程で行われます。このため、同じカーニバルでも真夏の祭典として祝い、都市型国際観光イベントとしての側面が強くなっています。
 なかでもリオデジャネイロのカーニバルでは、コミュニティを単位に住民が編成するエスコーラ(サンバ学校のチーム)によるサンバパレードがサンボドローモ(サンバ行進会場)で行われました。各エスコーラは数千人規模で、華麗な山車や衣装を用意し、オリジナル曲で優勝を争いました。また、専用会場以外でもストリートカーニバル(現地ではブロコスblocosと呼ぶ)が行われ、街中がサンバの音楽と踊りの熱気で包まれました。パレードに参加して乱舞するリオ住民の総勢は6万人以上と言われ、「地上最大のショー」とされています。(この項出典時事通信jiji.com、アトランティック通信theatlantic.com、WIKIPEDIA英語版など)
  
写真はブラジルの「風流踊」、2017年2月28日リオ・デ・ジャネイロのサンボドローモにおけるサンバ学校特別グループのパレード。By FernandoFrazão/AgênciaBrasil Fotografias - このファイルは、Creative Commons Attribution 2.0 Generic、wikipedia commonsによる

〇コロナウイルスの緊急事態:ヴェネチアカーニバル開催中止

イタリア・ヴェネト州のヴェネチア市(Città di Venezia)とヴェネチアカーニバル2020主催者(https://www.carnevale.venezia.it/)は、2020年2月23日、欧州最大のカーニバルであるヴェネチアカーニバルを23日24時をもって中止すると緊急発表しました。イタリア国内のCOVID-19の感染が急増。同日までの罹患者152人のほぼすべてが北部に集中しており、110人はロンバルディア州、その他はヴェネト州、エミリア=ロマニア州、およびピエモンテ州に集中しているためです。国の保健省、ヴェネト州知事の合意した新条例により、中止の決定が下されました。
 祭典は25日までフィナーレのイベントが予定されていましたが、すべてキャンセルとなりました。期間中には300万人の人出が予想されていました。主催者は「イベントに携わったすべての人々に感謝します。」と声明を発表し、次回の開催予定を「次回のヴェネチアカーニバルは、2021年1月30日土曜日から2月16日火曜日まで」と発表しました。
 2020年のヴェネチア・カーニバルは、「愛、遊び、愚かさ(Amore, gioco e follia)」をテーマとして、2月8日に開幕し、23日にかけてヴェネチアの街をアニメーション化しました。150のイベント、子供と男の子に特化した50のイニシアチブ、300人以上のアーティストが参加した文化イベントを含む多彩なプログラム。バレンタインデーにはサンマルコ広場での恋人たちに捧げられたイベントなどが伝統的行事に追加されました。(この項出典:TIME電子版time.com、ヴェネチア市、Carnevale di Venezia 2020 - sito ufficiale)
 
ヴェネチアカーニバル2020イメージポスター(出典ヴェネチア市 creative commons/Attribuzione 3.0 Italia (CC BY 3.0 IT))

〇「風流踊」が無形文化遺産候補に 37の類似行事を一括申請

 文化庁の報道発表によると、 国の文化審議会(無形文化遺産部会)は2020年2月19日、ユネスコの無形文化遺産への登録を目指す国内候補として、全国各地に伝わる豊作祈願や先祖供養などの民俗芸能「風流踊(ふりゅうおどり)」を選定しました。重要無形民俗文化財に指定された盆踊りや念仏踊りなどの中から、23都府県の37件をまとめて一つの文化遺産とみなし、既に単独で登録済の風流踊「チャッキラコ」(神奈川県)を拡張する形で、3月末までに政府がユネスコに申請書を提出します。2022年11月ごろのユネスコ政府間委員会で登録可否が審査される見通しとなっています。
 「風流踊」は華やかな、人目を惹く、という「風流」の精神を体現し、衣裳や持ちものに趣向をこらして、歌や笛、太鼓、鉦(かね)などに合わせて踊る民俗芸能。除災や死者供養、豊作祈願、雨乞いなど、安寧な暮らしを願う人々の祈りが込められています。祭礼や年中行事などの機会に地域の人々が世代を超えて参加しています。それぞれの地域の歴史と風土を反映し、多彩な姿で今日まで続く風流踊は、地域の活力の源として大きな役割を果たしています。

   これまで日本政府は、全国の風流踊のなかから、神奈川県三浦市三崎に伝わる小正月の伝統行事「チャッキラコ」だけをユネスコの無形文化遺産に選定していました。チャッキラコは2009年のユネスコの第1回無形文化遺産代表リストに登録されましたが、選定の過程で全国の多くの類似行事の保存団体からは不満が出ていたとされています。
 このため、文化庁は平成20年7月30日、「ユネスコ無形文化遺産の保護に関する条約への我が国の対応について」として、公式見解を発表する事態となっていました。
 その発表によると、「世界遺産と異なり,各国から提案された無形文化遺産は専門機関による価値の評価を行うことなく,『代表一覧表』に記載されることから,記載の有無によって,我が国の無形文化遺産の価値には何ら影響はない」と釈明したうえで、国の指定・選定に係る「重要無形文化財」,「重要無形民俗文化財」及び「選定保存技術」の一覧目録に掲載されている文化財を「無形文化遺産候補」として順次提案し,将来的には,これら全ての登録を目指す方針を明らかにしています。
 ところが、ユネスコは上記の日本政府の“全部登録”の方針に困惑しているということです。「人類の無形文化遺産の代表リスト」であるのに、日本の重要無形文化財・無形民俗文化財をすべて「人類の代表リスト」に登録申請されたのでは、収拾がつかなくなってしまうからだということです。
 ユネスコ無形文化遺産の2009年第1回リストでは、日本政府は「チャッキラコ」のほかに「甑島のトシドン」(鹿児島県)を単独で登録しました。政府が引き続き「男鹿のナマハゲ」を2011年に登録申請したところ「(トシドンと)類似の行事だ」との理由で認められなかったということです。このため、政府は改めて善後策として、国の重要無形民俗文化財になっている類似行事を「トシドン」に追加申請し、2018年に「来訪神:仮面・仮装の神々」の名称で一括登録を実現した経過があります。
 上記の追加拡張登録の成功は、全国の民俗芸能の保存団体を活気づけました。国の重要無形民俗文化財で「チャッキラコ」と類似の「風流」に分類される民俗芸能団体は、2019年2月、「全国民俗芸能『風流』保存・振興連合会」を設立し、ユネスコの無形文化遺産登録を目指す活動を続けてきました。加盟各団体は担い手不足を課題としており、登録を実現して継承の取り組みに弾みをつけたいと意気込んでいるということです。

   ユネスコでは、「無形文化遺産代表一覧表」への登録について、何を提案するかは各国の判断に委ねられているという前提ですが、「来訪神」や「風流踊」に見られるように、日本政府の「ある属性や概念を共有する類似だが互いに独立している行事を一括登録する」という提案基準を認めてしまうと、今後のユネスコの登録評価の作業の中で無形文化遺産の在り方そのものの見直しを迫られる可能性があります。
 事例をあげれば、日本の無形文化遺産「来訪神」の「年(季節)の節目を迎えるに当たり、仮面や蓑、笠などを身につけて来訪神に扮(ふん)した者が家々を訪れる行事」という属性は、そのまま2009年、無形文化遺産に登録されたハンガリーの「ブショーヤーラーシュ」、2015年のオーストリア「エブラルンのクランプス(スカブ)」の仮面仮装行事にもそのまま適用されるばかりでなく、この2件と同じ趣旨で欧州各国の何百という類似の仮面仮装の行事が行われています。何を人類の無形文化遺産を代表するリストに登録すべきなのか、わけが分からなくなってしまうのではないでしょうか。

   同様に、スイスのバーゼルで開催される「バーゼルのカーニバル」は2017年、ユネスコの無形文化遺産の代表リストに登録されましたが、同一のキリスト教カトリック文化圏の共通行事である「カーニバル」はヨーロッパや南米など世界各地の何千もの都市や町、村で行われています。
 特にブラジル・リオデジャネイロの「カーニバル」では、日本の「風流踊」の「華やかな、人目を惹く、という『風流』の精神を体現し、衣裳や持ちものに趣向をこらして、歌や笛、太鼓、鉦(かね)などに合わせて集団で踊る民俗芸能」という定義を、そっくりそのまま適用することができます。行事の背景に信仰や宗教的背景があることも類似です。風流踊もリオのカーニバルも、地域の人々が世代を超えて参加している点やそれぞれの地域の歴史と風土を反映している点でも類似です。リオのカーニバルにおける「サンバパレード」は日本の「風流踊」のブラジル版と言って差し支えなく、違うのは行事のスケール感だけといえます。

   なぜ、類似の行事に国境や民族の壁を設けて、別個に扱うのでしょうか? 無形文化遺産に何を登録提案するかは各国の政府の判断に任されているために、このような“矛盾”が生じているわけですが、各国の類似行事が「我が国の行事も登録を」と個別に申請している現状では、いずれ収拾がつかない事態が予想されます。
 しかし、一部の国々ではその矛盾に気が付き、多国間の無形民俗文化共有をユネスコに登録申請する事例がどんどん出てきています。一例では、イランの新年新春行事「ノウルーズ」は2009年、国連のユネスコ無形文化遺産に登録され、ノウルーズを新年行事として共有するアフガニスタン、アゼルバイジャン、 インド、イラン、イラク、カザフスタン、キルギス、パキスタン、タジキスタン、 トルコ、 トルクメニスタン、ウズベキスタンの12か国が同時登録されました。

   「ユネスコ無形文化遺産の保護に関する条約」第2条の定義では、「この無形文化遺産は、世代から世代へと伝承され、社会(コミュニティ)及び集団が自己の環境、自然との相互作用及び歴史に対応して絶えず再現し、かつ、当該社会及び集団に同一性及び継続性の認識を与えることにより、文化の多様性及び人類の創造性に対する尊重を助長するものである」とされています。
 しかし、上記の事例をはじめ地域資料デジタル化研究会の国際調査結果(別表参照)からも見ると、季節や年の変わり目に行われる無形民俗文化行事は、人類の国境、民族の壁を超えて共有されているのが実態です。
 無形民俗文化遺産は、国境や民族の壁の中で「人類の文化の多様性」を表現しているというよりも、むしろ「国境、民族の壁を超えて、人類の無形民俗文化の同一性、同質性」を証明しており、“民俗文化の分かち合い”の事例に満ちていると言えるでしょう。
 ユネスコは「民俗文化の多様性か、同質性か」の狭間で、定義の見直しを図るととともに、無形文化遺産のなかに、人類の相互理解と融和による世界平和の可能性を見出せるように努力すべきではないでしょうか。

  無形文化遺産に申請する民俗芸能「風流踊」37件(23都府県、40市町村)
 永井の大念仏剣舞、鬼剣舞(岩手)、 西馬音内の盆踊、毛馬内の盆踊(秋田)、小河内の鹿島踊、新島の大踊、下平井の鳳凰の舞(東京)、チャッキラコ、山北のお峰入り(神奈川)、綾子舞、大の阪(新潟)、無生野の大念仏(山梨)、跡部の踊り念仏、和合の念仏踊(長野)、郡上踊(岐阜)、徳山の盆踊、有東木の盆踊(静岡)、綾渡の夜念仏と盆踊(愛知)、勝手神社の神事踊(三重)、近江湖南のサンヤレ踊り、近江のケンケト祭り長刀振り(滋賀)、京都の六斎念仏、やすらい花、久多の花笠踊(京都)、阿万の風流大踊小踊(兵庫)、十津川の大踊(奈良)、津和野弥栄神社の鷺舞(島根)、白石踊、大宮踊(岡山)、西祖谷の神代踊(徳島)、綾子踊、滝宮の念仏踊(香川)、感応楽(福岡)、平戸のジャンガラ、大村の沖田踊・黒丸踊(長崎)、吉弘楽(大分)、五ケ瀬の荒踊(宮崎)
(この項出典:文化庁報道発表https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/92050401.html、共同通信47ニュース、」UNESCO Intangible Cultural Heritagehttps://ich.unesco.org/など)

〇仮面仮装や山車のパレード、どんど焼き 世界規模のカーニバル始まる

 欧州をはじめ世界各地で、キリスト教の「四旬節( Western Christian 40-day period)」前に行われる春の祝宴(またはどんちゃん騒ぎ)の「カーニバル(謝肉祭、carnival )」が2月上旬から行われています。世界の各地で仮面の仮装パレード、花や人形などで豪華な装飾が施された山車などが街の通りに繰り出し、また通りではごちそうパーティが開かれ、多くの観光客でにぎわっています。しかし、今年は新型コロナウイルス肺炎の拡散により、影響も心配されています。
 伝統的なカーニバルはカトリック教会の行事として、2020年には2月25日の「告解の火曜日」(英語ではFat Tuesday, Shrove Tuesday, Pancake Tuesday)を最終日とする6日間ですが、現代では世界各地で観光イベントとして、人々を楽しませる行事が長期にわたって展開され、外貨獲得や地域活性化に貢献しています。
 各国の農村部では、伝統を守ってこの一年の豊作や家畜の繁殖を祈願する農耕儀礼として行われますが、都市部では国際観光ショーとしての演出が強調されるようになっています。そのなかでも、イタリアのヴェネチア・カーニバル、ブラジル・リオデジャネイロのリオ・カーニバルなどでは期間中に何百万人もの観光客が訪れます。また、パンケーキ、ペストリーなどの各地で自慢の甘いパン菓子や、郷土料理を食べるのもカーニバルの楽しみとなっているようです。
 欧州各国では、カーニバル最終日には冬の寒さと悪魔を追い払い、この一年の豊作や幸運を招くための焚き火(日本のどんど焼きに類似)の火祭り行事があり、フィナーレとなります。
 (この項:ロイター通信reuters.com、Wikipedia英語版ほか)  

〇仮面仮装や山車のパレード、どんど焼き イタリアのカーニバル始まる

 イタリアでキリスト教の「四旬節」前に行われる春の祝宴(またはどんちゃん騒ぎ)の「カーニバル(謝肉祭、Carnevale )」が2020年2月9日、ヴェネツィア、ヴィアレッジョ、イヴレアなどで開幕しました。イタリア各地で仮面の仮装パレード、花や人形などで豪華な装飾が施された山車などが街の通りに繰り出し、観光客でにぎわっています。最終日は2月25日で、冬の寒さ、暗闇や悪魔を追い払い、この一年の豊作、健康と幸運を招くための焚き火(日本のどんど焼き)の火祭り行事があり、フィナーレとなります。

   カーニバルの起源は古代ローマの春を迎える祭りが継承され、教会の行事に受け入れられて世俗化したと考えられています。告悔の火曜日(Mardi Gras )の翌日が「灰色の水曜日」で、肉食などの断食や節制、ざんげなどを行う四旬節が始まるという行事日程になっています。
 カーニバルの名物は、会場で提供されるカーネベールのための伝統料理やペストリー(甘いパン菓子)、ソーセージ、ワインなどのグルメ体験です。各地域に自慢のペストリーがあり、地方ごとに、クロストリ(ヴェネト地方)ブギー(ピエモンテ地方)、チアッキエール(ロンバルディアなど)、フラッペ(中央イタリア)など多数の種類があります。
 また、カーニバルに欠かせないアイテムとして、街中パレードで撒く紙吹雪(coriandoliコリアンドーリ)、仮面(Mascheraマスケラ)があります。ヴェネツィアは仮面の製造で長い伝統があり、世界的な仮面の都市として知られています。
 イタリアの都市型カーニバーレで著名なものには次の都市があります。
 Viareggio、Fano、Sciacca、Massafra、Manfredonia、Acireale、Cento、Foiano della Chiana、Follonica、Ivrea、Putignano、Carnevale Storico di Santhi、Venezia、Castrovillari(wikipediaイタリア語版による。検索語は都市名の前にCarnevale di を付けてください )

  【誰でも仮面で変装 ヴェネチアのカーニバル開幕】
 イタリア北東部ヴェネト州の水の都ヴェネチア(Venezia)で2020年2月9日、恒例のカーニバル(Carnevale di Venezia)が開幕しました。ことしのテーマは「愛」と「愚かさ」で、仮面(マスケラ) とコスチュームで仮装した人々がカナル・グランデ(大運河)でゴンドラに乗ったり、サンマルコ広場を練り歩いたりする姿が見られました。祭典は25日まで開催され、さまざまなイベントが展開されます。例年期間中に世界中から訪れる観光客は300万人に達するといわれています。
 ヴェネチアのカーニバルはブラジルのリオデジャネイロとともに世界で最も有名なカーニバルとして国際観光イベント化しており、2月9日からプレイベントを開催し、カーニバル本期間を15日~25日として、世界の人を楽しませるイベントが盛りだくさんに組まれています。
 見どころは、マリア達の行進(15日)、天使の飛翔(16日)、仮面コンクール(15日~25日)など。ヴェネチアカーニバルの特色は、住民も観光客も誰もが仮面とコスチュームで変装して、祭典に参加できることです。それは中世のヴェネツィア共和国内で生じた社会階級間の緊張と不満のはけ口として、「四旬節」に入る直前のどんちゃん騒ぎであるカーニバルにかぎって、市民は、変装により自分の身元を隠すことを認められ、祭典では社会階級、性別を超えて解放気分を味わえた風習を現代に引き継いだ行事だということです。
 観光客は市内のショップで仮面を購入できるほか、華麗なコスチュームはレンタルされており、料金は24時間で200~1500ユーロ(約2万4千~18万円)だということです。
 
 By Anita Martinz from Klagenfurt, Austria - Flickr, CC BY 2.0, https://commons.wikimedia.org/ (出典:ヴェネチアカーニバル公式サイトhttps://www.carnevale.venezia.it/、イタリア政府観光局(ENIT)日本語版公式サイトhttp://visitaly.jp/、WIKIPEDIAイタリア語版、NHK NEWS WEB2020年2月9日、ナショナルジオグラフィック日本語版2018.01.22)

【目を見張る山車のパレード ヴィアレッジョのカーニバル】
 イタリアを代表するカーニバルの一つであるCarnevale di Viareggioは、トスカーナ州のヴィアレッジョで2月9日に開幕しました。特色は、政治家、芸能人、スポーツマンなどの人気のある人々の巨大な人形のオブジェや似顔絵を描いた山車(フロート)と仮面仮装のパレードで、会場の海岸通りは海外から観光客でにぎわっています。2020年はサッカーのスター選手であるクリスティアーノ・ロナウドをロボットに見立てた高さ20mもある巨大な山車が話題を呼んでいます。山車の人形は通常紙パルプの張り子(パルピ・マシェ)で製作されます。マシェは1925年にヴィアレッジョ・アントニオダルリアーノの製造業者によって発明され、カーニバルの名物となっています。
 ヴェネチアのカーニバルと同様にヴィアレッジョでも、観光客が仮装してパレードに参加することができることが特色で、主催者と観光客が一体になって楽しむことができます。
 
 2010年に登場した巨大な山車Dance of the Dragon   BY Di Anowak7 - Opera propria, Pubblico dominio, commons.wikimedia (この項出典:FONDAZIONE CARNEVALE DI VIAREGGIO公式サイトなど)

【オレンジ合戦とどんど焼き 奇祭イヴレアのカーニバル】
 イヴレアのカーニバル(Carnevale di Ivrea)は2月9日、ユネスコ世界遺産「20世紀の産業都市イヴレア」に登録されたピエモンテ州イヴレアで開幕し、歴史にもとづくパレードや伝統の豆料理の配布が行われました。カーニバルの特色は、中世の史実である暴君の圧政に立ち向かい、自由を勝ち取った市民の戦いを、オレンジの投げ合いで再現する「オレンジ合戦」。お祭りのクライマックスに3日間繰り広げられ、街の通りを埋め尽くすほどの大量のオレンジを投げあう壮絶なイベントです。
 期間中の楽しみは伝統料理の提供で、町ごとにファジョラーテ(インゲン豆と豚肉煮込み)、ポレンタ、魚のタラ、玉ねぎの煮込みなどの伝統料理が大鍋で登場し、来場者に配られます。
 最終日の2月25日は、昼間のオレンジの戦いが終わると、夕方から教会の5教区の広場でスカルリ焼き(Abruciamento degli Scarli)が行われます。スカルリは木の柱にギョリュウモドキや常緑のセイヨウネズ、杜松の枝葉で覆ったポールであり、人々にこの一年の活力と幸運をもたらす儀式のしるしとして燃やされます。会場では、市民が勝ち取った自由の象徴であるヴェッゾーサ・ムニャイア(VEZZOSA MUGNAIA)役の女性が、炎が完全にスカルリを破壊するまで剣を高く捧げ持って見守ります。
 「炎がポールをより速く跳ぶほど、人々は幸せになる」と言われることから、人々は「ブルサ=brusa(燃えている、燃えている)」を叫び、この年の幸運を呼びこもうとします。
 燃える火は、聖なる浄化の火と考えられ、市民の勝利と自由、古い人の死、新しい人の誕生の象徴とも考えられるということです。
 
 2008年2月、オレンジ合戦の戦場 BY Di Laurom - Opera propria, Pubblico dominio, commons.wikimedia
 
写真はイヴレアカーニバルのスカルリ焼き LauromによるOwn work、2008、commons.wikimedia
(この項出典:Fondazione dello Storico Carnevale di Ivrea公式サイトhttps://www.storicocarnevaleivrea.it/、イタリア政府観光局(ENIT)日本語公式サイトなど)
(2020年2月16日更新)

〇暖冬で雪の小正月行事に深刻な影響(秋田県) 

 2020年2月11日~15日に開催が予定されていた秋田県美郷町の小正月行事「六郷のカマクラ」は記録的な暖冬のため会場の雪不足となった影響で中止となりました。一部催し物は開催されています。中止となったのは、男衆が青竹で打ち合う「竹うち」と松飾りなどを燃やす「どんと焼き」、住民の願い事を書いた紙を掲げる「天筆掲揚」。中止は1989年に同じく雪不足で取りやめて以来31年ぶりということです。代替行事として竹うち会場が竹灯籠で彩られ、願い事を書いた天筆をどんと焼きで燃やす「天筆焼き」は小規模なかがり火で行われたということです。  秋田県横手市の冬の小正月行事「かまくら」も2月15日、2日間の日程で行われました。雪不足のため、主催の市観光協会などは雪を市外からも調達してかまくらを制作し、例年の4分の3ほどの60基を完成させた。15日午後5時現在の市内の積雪は15センチと平年の2割だということです。(この項秋田魁新報WEBなど)

〇小正月行事タルジプ焼きが全国でキャンセル(韓国) 

 2020年の新型コロナウイルス感染症(韓国では「武漢肺炎」と呼ばれる)の拡散を受けて、韓国の各自治体が2月8日の小正月行事タルジプ焼き、ジュウィブルゲームなどを次々キャンセルするよう通知しました。このため、各地のタルジプ焼きがほとんど中止され、さびしい小正月となったということです。
 なかでも、慶尚北道清道郡は新型コロナウイルス感染症の拡散の懸念に基づいて、8日に予定されていた小正月の民俗フェスティバルイベントをキャンセルし、これにより、全国最大規模(高さ20m、幅15m、重さ250トン)を誇るタルジプ焼きも中止されました。
 慶尚南道宜寧郡も8日に開かれる予定だった小正月の伝統民俗遊び群単位イベント(主催宜寧文化院)をキャンセルしました。宜寧郡は新型コロナウイルス感染症の拡散に基づいて、数百人が参加する小正月行事を開催することが不適切であると判断した。併せて、市町村単位の小正月行事もなるべく自制してほしいと要請しました。
 そのほか、全国各地で多数の人が集まるイベントの開催が中止され、影響は多方面に渡っているということです。  (出典:韓国観光文化発展研究所フェスタニュースhttp://www.chookjenews.kr[정월대보름 달집태우기 등 행사 '실종'])

〇クラヴィー樽焼き祭りで新年を祝う(英国) 

 英国スコットランド北部の漁村バーグヘッドで2020年1月11日、伝統の新年火祭りクラヴィー焼き(Burning of the Clavie)が行われました。英国の1750年代にユリウス暦からグレゴリオ暦が導入されたため、バーグヘッドの人々は1月1日と1月11日に新年を2回祝うことになりました。そのため、1月11日の新年の祝いには火のついたClavie(燃えるタールと木片でいっぱいの樽)を住民が担いで、街中を練り歩きました。何百人もの見物人の行列が続きます。
 担ぎ手の人々は、「ピートの道をあけろ」「ヒップヒップ(hip,hip)」などの掛け声をあげながら、燃えてくすぶっているClavieの黒い破片を、各家の住民に手渡して歩きます。村人たちは「焼けたクラヴィーの破片を受け取ると新年に幸運をもたらす」と信じているということです。
 クラヴィーは、火祭りの会場は古代の砦の城壁にあるDoorie Hillに運び込まれ、並べて置かれると「ヒップヒップ」の掛け声で次々に点火されました。会場はほぼ満月に照らされ、燃え上がるクラヴィーとともに幻想的な光景が広がり、会場を訪れた観光客を感動させたということです。観客はその後、新年の幸運を確保するために、焦げた木片を拾って持ち帰ったということです。

(By Anne Burgess, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1575289)
(出典:Press and Journal-2020/01/12、wikipedia[Burghead])

〇勇壮なバイキングの火祭りアップ・ヘリ―・アーで春を迎える(英国) 

 ヨーロッパ最大の火祭りとされるアップ・ヘリ―・アー(Up Helly Aa)が2020年1月28日、英国のスコットランド・シェトランド州ラーウィック(シェトランド諸島)で開催されました。Up Helly Aaは、厳しい冬に別れを告げ、春の到来を祝うため、1,000年前にシェトランド諸島を支配していたバイキングの伝統文化に則って、1月の最終火曜日に開催されています。1870年代にTotal Abstinence Societyによって最初に開催され、およそ150年の伝統があります。
 祭典では、スコットランド諸島の住民が古代のバイキングの衣装をまとって、祭典の主役である勇者ガイザー・ジャールと戦士チームに扮装し、47部隊の編成で街の通りを練り歩きました。ところどころで、チームの役者は前年の出来事を風刺劇で再現して見せます。
 日暮れ後、バイキングのチームはたいまつを掲げて、町の通りをバイキングの長い船(ロングシップ)の実物大レプリカを引いて、祭りの会場に向かいます。
 会場では、バイキングの文化を誇りとする戦士チームは、Up Helly Aaの歌を歌い、ガイザーと戦士がおよそ1000本のたいまつを一斉にロングシップに投げ込むと、船は大きな炎をあげて燃え上がり、祭りはクライマックスを迎えます。火祭りのあとは町のコミュニティホールで徹夜のパーティが開かれ、住民や観光客が交流を深めました。この勇壮な光景を見るために世界各地からの観光客がラーウィックを訪問したということです。
 今年の話題は、Up Helly Aa実行委員会が女性のチームへの参加を制限したり、バイキングの民間伝承における女性戦士の役割を認めることを拒否したりしている問題について、男女共同参画活動家のグループが、少女と女性のより大きな関与を求めて実行委員会に抗議声明書を出す事態に発展したということことです。
 戦士たちの行進パレードという類似例では、日本でも山梨県甲府市の4月の祭典「甲州軍団出陣」がありますが、この事例では、仮装武士の隊列が市内の甲府駅周辺の目抜き通りを行進して祭典は直ちに終ります。Up Helly Aaでは、仮装戦士のパレードの後の勇壮な火祭りが本番で、そのあと徹夜の無礼講パーティが続きます。1月のシェトランドは酷寒のなかですが、このイベントを支えているのは、住民たちのバイキング伝統へのプライドと情熱だということです。
 火祭りの引き船という祭りの形態は日本でも見られ、山梨県笛吹市石和町の「道祖神祭オブネ」では全長約6mの舟型の台に松やヒノキの枝で飾り、先頭にその年の干支を飾り、地区内を引き回し、道祖神場で燃やされます。

たいまつを掲げて、町の通りを練り歩くガイザー・ジャールと戦士部隊(出典By Mike Pennington, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14424446)

燃え上がるバイキングのロングシップ(出典By Anne Burgess, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1578006 ) (この出典:Up Helly Aa委員会公式ウェブサイトhttps://www.uphellyaa.org/、BBCニュース電子版、https://www.shetnews.co.uk/など、2020年2月8日更新)

○お日待ち(庚申講)と道祖神祭 

 長野県伊那市高遠町の引持地区に伝わる小正月行事「お日待ちの獅子舞」が2020年1月12日夜、引持生活改善センターで行われました。地元保存会が独特のおはやしに乗せて勇壮な獅子舞による演舞を披露。地域住民ら約50人が集まり、この一年の無病息災や家内安全、地域の安泰を願いました。
 また、神奈川県川崎市多摩区稲田堤にある八雲神社では、1月15日午前、どんど焼きとお日待講の神事が行われました。
 お日待ちは、中国の庚申信仰が起源とされます。平安時代に京都の八坂庚申堂などから全国に広まったとされ、関東や山梨、長野では、道祖神信仰と習合して、道祖神石碑とともに庚申塔(青面金剛と見ザル🙈 言わザル🙊聞かザル🙉の三猿を刻んだ石塔)が各地でまつられています。山梨や長野のお日待ちでは、地域の組を単位とした大人や子供たちが一緒に飲食する例が多いようです。(2020年1月15日更新)

○インド最大の“正月行事”、灯火の祭典ディワリ祭で祝う 

 新年を祝う“正月行事”として、インドでは最も待ち望まれており、最も祝われているディワリ祭は2019年10月27日に始まり、5日間の祝賀行事を祝いました。ディワリ(ヒンディー語: दीवाली, dīwālī、サンスクリット語: दीपावली, Dīpāvalī)は、インドのヒンドゥー教のお祝いで、別名「光のフェスティバル」とも呼ばれ、暗闇に対する光、悪に対する善の勝利を祝い、また冬が来る前の収穫をお祝いするためのお祭です。ヒンドゥー暦のカールッティカ月の新月の夜(グレゴリオ暦では10月から11月)に祝われるため、毎年開催日が移動します。
 ディワリの行事では幸運を呼び込むために部屋を掃除したり、新しいキッチン用品を買い込み、キャンドル(ディヤ)を買って家を光で飾ります。色粉または砂を使い、Rangoliという模様を床に描く風習も広く行われています。家々では、親戚や友人が集まり、プレゼントの交換やミターイ(methai)という甘いお菓子を、マサラチャイと一緒に楽しむということです。  祭礼では、街中がろうそく(ディヤ)やLED照明で飾られ、夜になると街が光の海のようになり、都市部では花火大会で盛り上がります。また、健康と富を召喚するためのラクシュミ、ガネーシャの礼拝、クラッカーを鳴らすなどが祭りの主な儀式です。
 もともとヒンズー教の祭りであったディワリ祭は、ヒンズー教徒以外でも祝われ、インド、ネパール、スリランカ、ミャンマー、モーリシャス、ガイアナ、トリニダードトバゴ、スリナム、マレーシア、シンガポール、フィジーの公式の祝日となっているということです。
 日本国内でも2019年10月26日~27日の2日間、「第17回ディワリ・イン・ヨコハマ2019」が神奈川県横浜市・山下公園で開催され、2019年11月16日、東京都江戸川区西葛西新田6号公園で「第20回東京ディワリ西葛西」が開催されました。江戸川区が日本で最も多くのインド人が住むとされることから、日本やインド、世界各国との文化交流を深め、地域を盛り上げようと地区の実行委員会が主催しました。インド舞踊や和太鼓の公演、本場のカリー料理などで交流しました。

ディーワーリーの夜に灯かりを並べる女性達 BY Ashish Kanitkar , CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=18451336
(出典Society for the confluence of festival of India/https://www.diwalifestival.org/ 、The IndianExpressWEB版、WIKIPEDIA、江戸川区公式WEBなど)

○神聖な火の前で生命の再生を祝う 英国ベルテーン火祭り 

 生命の再生を祝う火祭りの祭典である「ベルテーン火祭り(Beltane Fire festival)」は2019年4月30日、英国イングランド・エディンバラ市内のカールトンヒル(Calton Hill)で開催され、海外からの観光客を含め、およそ8000人の観客が参加しました。
 この火祭り祭典は、若い男女が裸体で乱舞する奇祭としても知られ、夏の光を象徴する「メイ女王(May Queen)」を迎えるため、若い男女が肌を赤く塗って下帯(ふんどし)姿で、祭場をドラムを打ち鳴らし乱舞したり、燃え盛るたいまつを手に持って振り回す(日本の火振りに類似)をしたり、人間タワーを作ったりして、メイ女王とグリーンマンの神聖婚礼を盛り上げました。
 2019年のエディンバラ・ベルテーンでは、祭典の中心人物であるメイ女王が、石油の流出と森林破壊を描くためにリサイクルされた材料で作られたコスチュームを着用し、人類が地球に行っている環境破壊に対する怒りを表現し、環境メッセージを強調しました。
 ベルテーンはアイルランド、スコットランド、そしてマン島など英国各地で行われています。各地のベルテーン前夜祭の火祭り儀式では、火は浄化と癒しの神聖な力を持つと信じられ、牧畜、農作物、そして人々を守り、浄化し、成長を促すために火祭りが行われています。ベルテーンの炎、煙そして灰は牛や作物を保護する力を持っていると見なされ、人々は家畜とともに焚き火のまわりや2つの焚き火の間を歩き回り、時々炎や燃え差しを飛び越えて、豊穣を祈る。この夜は男女の求愛の機会と考えられ、安産祈願も行われたということです。また、メイポール(5月の陽物)を祭場に立て、周りのリボンを持った少女たちが舞い踊る伝統行事も行われました。

Bonfire at the Beltane Fire Festival 2019, Calton Hill, Edinburgh/ By Nyri0 - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=81651179

By Stefan Schäfer, Lich - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19489496 (出典:BBCニュース2019/4/30、ベルテーン実行委員会公式サイトBeltane.org、wikipediaなど)

 

○西暦以外の世界の暦 

 日本における5月1日の改元を前に共同通信は3月28日から「世界の暦を知る(3回連載)」と題して、西暦以外の世界各国の独自の暦を紹介しました。暦の違いにより新年の始まりが国によって違うことになります。
 【中国農暦】
 中国の農暦は日本でも江戸時代まで「旧暦」として使われていました。日本では明治に廃止されたが、中国では現代でも市民生活に浸透し、台湾、香港のほか、華僑が多い東南アジアで使われています。
 農暦は月の満ち欠けに従う太陰暦を基本としますが、太陽暦より1年が10~12日短いため、季節の廻りが毎年ずれていく欠点があります。このため、2~4年に一度のうるう年に1年を13カ月としてずれを調整しています。また、年中行事の日程が、太陽暦と比べると毎年移動します。2019年の農暦元日(春節)は西暦2月5日。中国では前後1週間が大型連休となり、盛大に祝っています。
【タイ仏暦】
 人口の約95%が仏教徒のタイでは、釈迦の死(入滅)の翌年を基準とする仏暦が西暦1913年から公用暦として使われています。2019年は仏暦2562年となります。仏教徒が多いカンボジア、ラオスでも仏暦が使われています。仏暦の1月1日は毎年西暦の4月13日から15日(に固定され、旧正月「ソンクラーン」を人々が街頭で水をかけあう「水かけ祭り」で祝います。
【イスラム教圏イスラム暦】
 イスラム暦は預言者ムハンマドがメッカからメディナへ移った年(西暦625年)を基準とし、月の満ち欠けに従う太陰暦。暦と季節が一致しない不便がありますが、イスラム教の重要な行事「ラマダン」がイスラム暦によってきめられています。
【イラン暦】
 イラン暦は1975年に公用暦に採用され、人々の日々の暮らしの中で使われています。イスラム暦と同じ西暦625年を元年としますが、イスラム暦と違い太陽暦です。古代ペルシャのゾロアスター教(拝火教)の教えである「善が悪を打ち負かし、世界を一新した日」とされる春分の日に1年が始まり、人々は「ノウルーズ(新しい日)」を盛大に祝い、10日間の大型連休となります。ノウルーズが近づくと顔を黒く塗り、音楽を奏でながら踊る「ハッジフィールーズ」が街頭に現れ、春の到来を告げます。
 ノウルーズは中央アジアの周辺諸国でも祝日となっています。
【ロシアユリウス暦】
 ユリウス暦は古代ローマの将軍ユリウス・カエサルが紀元前46年に定め、1年を365日とし、4年に一度のうるう年を設けるなど、現在の西暦(グレゴリオ暦)の前身。グレゴリオ暦は16世紀、欧州各国にに広がったが、ロシアで導入が決まったのはロシア革命の翌年1918年でした。
 しかし、ロシアやジョージアの正教会では、現在でも宗教の祝祭日をユリウス暦を基に定めています。西暦とユリウス暦は13日のずれがあるため、ロシアのクリスマスは西暦1月7日に祝うことになります。(2019年3月30日更新)

○2019年旧暦小正月の満月はスーパームーンと重なる 

 国立天文台WEB版によると、2019年の旧暦小正月は2月19日となりますが、今年最大の満月(スーパームーン)となります。古代から新年最初の満月は、この一年の幸せを願う最も縁起の良い月とされてきましたが、今年はそれがスーパームーンと重なり、めでたさも最大になりそうです。
  今年のスーパームーンは、2月19日18時3分に、地球に最も近づく近地点を通過し、日付が変わってすぐの2月20日0時54分に満月となります。空高くほぼ南中の位置となります。2月20日の満月は、地球の中心と月の中心間の距離=地心距離が約35万7千キロメートルとなります。
 満月における地心距離は、およそ35万6千キロメートルから40万7千キロメートルの間で変化します。そして、月の視直径は、地球と月との距離が近いときには大きく、遠いときには小さくなります。最も大きな満月は最も小さな満月に比べて、14パーセント視直径が大きく、30パーセント明るく見えるということです。
 東アジアの各国の人々は旧暦小正月を「元宵節」として満月を楽しみますが、中国の一部の報道では、今年最大の満月はこの100年で最大のスーパームーンと伝える新聞もあり、真夜中の空高く輝く、新春の月見に期待が高まります。(2019年2月17日更新)

○中国など東アジアで春節連休スタート 

 中国などで2019年2月4日、旧正月に伴う大型連休が始まりました。中国では旧暦正月を「春節」(2019年は2月5日)と呼び、新年と新春の到来を盛大に祝う。実家に帰省して家族と春節を祝う人が多く、報道によれば、中国政府は、今年の春運(『春節』期間の帰省等に伴う特別輸送体制)を1月21日から3月1日までの40日間と定め、その間の鉄道や飛行機等各種輸送手段による旅客輸送量は延べ29億9,000万人(前年同期比+0.6%)になる見通しを発表しています。「春運」では国内外の交通機関が大混雑となります。
 また、オンライン旅行会社の大手である携程旅行網(シートリップ)によると、2019年の『春節』休暇期間中の旅行者数は約4億人に達すると予想し、過去最高の700万人が海外を訪れる見通しだということです。
 春節と同様に東アジアで旧正月を祝うのは、中国・台湾、モンゴル、朝鮮半島、東南アジアのベトナム、シンガポール、マレーシア、インドネシアなど。アジアで人の大移動が本格化し、人気渡航先の一つである日本では各地の小売業や観光地などで訪日客需要の書き入れ時を迎えています。ちなみに東アジアで新暦(太陽暦)で新年を祝っているのは日本だけ。(2019/2/5更新)

○英国、アイルランドで立春をインボルク火祭りで祝う 

 英国、アイルランドでは2019年2月1日から3日にかけてインボルク火祭り(Imbolc Fire Festival)が各地で行われました。冬至と春分点の中間(日本の立春に相当)に行われ、春の到来と冬の終わりを祝う、約2千年前から続く古代ケルトの祝祭とされています。イングランド北部ハッダーズフィールド近郊のマースデンでは、雪原の火祭りの会場に聖火を運ぶため、人々がたいまつ行列を行いました。太陽の戻りを象徴する儀式で、会場では2人の仮装巨人がいて、冬を象徴するジャックフロストと春と作物の豊穣を象徴するグリーンマンが戦い、グリーンマンが勝利し、たいまつを振り回す火振りや花火が上げられ、祭典は最高潮となりました。
 アイルランドのインボルクでは、ケルト神話の火と癒しの女神「聖ブリジッド(goddess Brighid)」の祝祭とされています。各家庭で少女が、聖ブリジットの人形(ブリデオグ)をトウモロコシで作り、インボルク当日の2月1日、少女たちは「ブリデオグ」を持って、隣近所を家から家へとめぐり歩いて、一年の幸せを祝福し、お金やお菓子をもらいました。これは日本の小正月で子どもたちが家々を祝福して回る行事と類似していることが分かりました。

燃え盛る巨大なジャックフロストの前にドラマーとたいまつを持つ人々 Marsden Huddersfield 2006/  By malcolm - originally posted to Flickr as Imbolc 005, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5858011
 (この項出典:independent.ie、デイリーメイルニュースdailymail.co.uk、wikipediaなど)(2019/2/5更新)

○節分「恵方巻」の大量廃棄が社会問題に

 

農林水産省は2019年1月11日、2月の節分に食べる巻きずし「恵方巻(えほうまき)」の商戦が活発になるのを前に、スーパーやコンビニエンスストアなどが加盟する7つの業界団体に対し、消費者の需要に見合う販売を行って、食品の廃棄を減らすよう文書で要請しました。全国で販売合戦が過熱し、売れ残った恵方巻きが大量に捨てられることが問題となっているため。同省が恵方巻きの廃棄でこうした要請をするのは初めてということです。
 恵方巻は、この1年の無病息災を祈る縁起物として、近年2月3日の節分の日に食べられるようになりました。この風習の起源は、諸説ありますが、主に関西の風習を基に大手のコンビニエンスストアや大手スーパーが商業キャンペーンのため全国に広めたとされています。
 大手コンビニのファミリーマート・キャンペーン商品情報サイトによると、恵方巻の食べ方は、「縁を切らない」という理由で、その年の恵方を向いて、1本を切らずに無言で食べるとよいとされています。また、恵方巻の販売例をみると、
恵方巻(1本)税込420円
●商品サイズ:約長さ14.0×直径4.7cm
●具材:玉子焼、椎茸煮、かんぴょう煮、穴子、高野豆腐、おぼろ、きゅうり
このほか、ひれかつ恵方巻、海鮮恵方巻、トルティーヤ恵方巻など(2019/2/5更新)

○ロシア国民は、マスレニツァの火祭りで冬の象徴を燃やし、一年の豊穣を祈る

 ロシアの人々が春の訪れを祝う祭典「マスレニツァ(英語Maslenitsa、露語Масленица)」またはパンケーキ・ウィークが、2019年は3月4日(月)から3月10日(日)まで行われました。マスレニツァは、春の訪れを祝う古代スラブ民族の異教徒の祭典とされています。キリスト教の伝道により、正教会の典礼として四旬節(復活祭前の46日間)の直前に行われる謝肉祭(カーニバル)の行事と、スラブの民俗行事が習合したものとされます。復活祭が、基本的に「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるため、マスレニツァも年によって2月から3月にかけて、日付が変わる移動祝日となります。
 長い冬を過ごした後、ロシアの人々はお祭り気分で、月曜に始まる1週間を寒い季節の終わりと春の到来をマスレニツァで盛大に祝います。週内の各曜日には宗教的な意味があり、パンケーキを食べる風習があります。
 最終日は「許しの日曜日(カトリック教会などのシュローブ、マルディグラに相当)」と呼ばれ、親戚や友人はお互いに許しを求め、贈り物をする風習があります。また、街の公園や広場ではマスレニツァ祭が行われ、ステージで歌や演劇、漫才などがあります。
 祭りの集大成はマスレニツァ人形焼きで、冬を象徴する女性の人形(Maslenitsa Effigy)をたき火で燃やし、長かった凍てつく季節に別れを告げます。人々はパンケーキを火の中に投げ込んで、今年の豊穣、豊作を祈ります。マスレニツァの灰を畑にまくと、収穫がよくなるともいわれているそうです。  子どもたちは公園などでトロイカ(3頭立ての馬そり)乗り、雪そり遊び、回転するブランコ(スイング)で遊び、大人はボクシングを楽しみます。公園にはテントの飲食屋台が立ち並び、パンケーキやクレープの他にピロシキやリンゴ飴、蜂蜜のお酒(Medovukha、Kvass)を楽しみます。
冬を象徴するマスレニツァ人形焼きで、人々は冬に別れを告げる。By Лобачев Владимир - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38564002
 (この項出典:スプートニクインタナショナルsputniknews.com、wikipedia英語版など)(2019/3/10更新)

○インド北部の州でローリ祭り 焚き火で一年の豊作、幸福、平和を祈願

 インドの伝統的な豊作を願い、冬の終わりと新年を焚き火で祝う「ローリ祭(Lohri)」は2019年1月13日、パンジャブ州、ハリヤナ州、ヒマーチャルプラデーシュ州などインド北部の多くの州で盛大に行われました。祭りは主にヒンズー教徒とシーク教徒の集落コミュニティによって祝われます。ローリ祭は、冬至が通過し新年を迎える聖なるたき火で、小麦など作物を収穫する前に、人々は神に感謝の意を表し、豊作になるよう祈りを捧げました。
  人々は火の神である「アグニ」の聖なるたき火のまわりに集まり、燃え上がる炎に祈り、歌い、ダンスし、そしてガジャク、チキン、ジャガリー(サトウキビの菓子)、ポップコーン、ゴマ(ティル)、レワリ、ピーナッツのような食べ物を投げ入れて「幸せがくるように」と叫びます。
 全国各地で収穫期と寒い冬の終わり、そして新年と春(夏)の到来を祝う収穫祭。南部のPongal、アッサムのBhugali Bihu、Andhra PradeshのBhogi、そしてインド中央部のマカラサンクランティ(Makar Sankranti, MôkôrSôngkrānti)、そのほかShakrain、Maghiなどと呼ばれます。特にパンジャブ州が盛ん。ヒンズー教の暦によると、ローリは1月中旬(1月13、14、15日ごろ)に行われる。この時点で地球は冬至を過ぎ、再び太陽に接近するため、年間で最も寒い月を終え、夏の季節が始まる。1月になると、パンジャブの畑は小麦が実り、農民たちは刈り込みや収穫の前の休息期間中に巨大な焚き火でローリを祝う。また、人々はローリを祝う挨拶状を交換するということです。
 伝統的にローリのお祝いのごちそうは、牛乳から作られ、自家製のバターを添えるマッキキロチ(キビの手巻きパン)とサルソンカサーグ(マスタードハーブの料理)でもてなされる。これ以外にも、ゴマとジャガリーを入れたゴマ米(チルバート)も用意されています。
 祭礼の日中は、子供たちや若者たちが、凧揚げフェスティバルを行い、'Happy Lohri'と 'Happy NewYear'と書いた凧を空高く揚げました。田舎ではお小遣い、お菓子を求める子供たちが歌を歌いながら家々を回ります。ハリヤナ州のカタール(Khattar)知事は 「皆さんに幸せなローリを望みます。この収穫の季節があなたとあなたの家族に幸運、繁栄、平和と幸福をもたらすように」と祝福メッセージを発表したということです。
 一方、インド東部のタミル・ナードゥ州で2020年1月15日から18日の4日間、伝統的な収穫祭「ポンガル」が行われ、農民たちは作物を育てるエネルギーを提供してくれた太陽神に感謝しました。伝統によれば、この祭りは冬の終わりを意味し、太陽が黄道帯のマカラ(山羊座)に入る6か月間の北への旅(ウッタラヤナム)の始まりとされます。祭典は「煮る、あふれる」という意味の儀式「ポンガル」にちなんで名付けられました。新しく収穫された米をジャガリー(サトウキビ砂糖)を加えた牛乳で煮た伝統的な甘い料理が用意され、最初に神と女神(ポンガル女神)に捧げられたということです。
 
インドの“どんど焼き”、ローリ火祭りのイメージ(google画像検索「Lohri+India」の出力結果による)
(この項出典:economictimes.indiatimes.comニュース、ファイナンシャル・エクスプレス、WIKIPEDIA英語版など)(2020/2/1更新)

○日本の「来訪神」がユネスコ無形文化遺産に決定 ユネスコの審査に疑問も

  共同通信などによると、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2018年11月29日、インド洋のモーリシャスで政府間委員会を開き、日本政府が申請した「来訪神 仮面・仮装の神々」を「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に登録することを決めました。
ユネスコ無形文化遺産となったのは
「吉浜のスネカ」(岩手)「米川の水かぶり」(宮城)「男鹿のナマハゲ」(秋田)「遊佐の小正月行事」(山形)「能登のアマメハギ」(石川)「見島のカセドリ」(佐賀)「甑島のトシドン」(鹿児島)「薩摩硫黄島のメンドン」(同)「悪石島のボゼ」(同)「宮古島のパーントゥ」(沖縄)の8県の10件です。

 これらの来訪神行事のうち、「甑島(こしきじま)のトシドン」(鹿児島県薩摩川内市)だけが2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されていました。このため類似行事として国内で知名度の高い「男鹿のナマハゲ」などもユネスコ文化遺産への登録を希望したものの、「類似の行事を新たに登録するのは不可」とユネスコ側から却下されてしまいました。そもそも論として、トシドンだけが類似行事のなかで、なぜ単独登録請されたのか、大きな疑問が残るわけですが、日本政府は打開策として「甑島のトシドン」に、国内の同様の行事をあわせて追加拡大させる形で、来訪神行事が登録されました。このため国内の無形文化遺産の登録数は21件のままとなっています。
 来訪神は、正月や小正月など年の節目にオニの仮面をつけたり仮装したりした人が「神」として家々を訪れる行事。怠け者を戒めたり、幸福や豊穣(ほうじょう)をもたらしたりするとされ、10件はいずれも国の重要無形民俗文化財に指定されています。ユネスコが公開した行事の意義は、以下のように集約されています。
「異様な衣装と恐ろしい仮面の神が家を訪れ、子どもたちの怠惰を戒め、良い行動をするよう教えを垂れる。世帯主は神を特別な食事でもてなす。この儀式は、社会的、歴史的背景が異なる地域で発展してきたため、地域の特性を反映して多様な形態をとるが、その趣旨は地元の人々、特に子供たちは自分のアイデンティティを形作り、自分たちのコミュニティとの帰属意識を高め、関係を強化します。先祖の教えに従って、コミュニティのメンバーは責任を共有し、儀式の準備と実行に協力し、関連知識の伝達に責任を持つ継承者として行動している」(UNESCO公式サイト英語版より仮訳)

 一部の報道によると、来訪神は日本独自の無形文化遺産とされていますが、これは明白な誤りです。地域資料デジタル化研究会の国際調査によると、欧州各国では、日本と同じ趣旨と姿をした新年仮装行事であるクランプス(Krampus)をはじめオニなどに仮装した来訪神(精霊)行事が広く行われ、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。インドネシア・バリ島でも新年にオニが来訪する「オゴオゴ(ogoh-ogoh)」が行われています。

  【日本と欧州の“来訪神 仮面・仮装の神々”のイメージの相似、あるいは類似の実例】   
日本の来訪神 仮面・仮装の神々のイメージ(google画像検索「来訪神+仮面・仮装の神々」の出力結果による)

ヨーロッパの“来訪神 仮面仮装の神々”、クランパス、クケリなどのイメージ(google画像検索「Krampus+kukeri」の出力結果による))

   デジ研の調査によれば、世界の来訪神は各地の集落共同体を単位とした、厄払い、悪魔払い、子どもの健全育成、家内招福のための一つの共有された民俗文化です。欧州の「クランプス」は日本の来訪神「ナマハゲ」などと同様に、年の変わり目に恐ろしい仮面をつけて出現し、「子どもたちの怠惰を戒め、良い行動をするよう教える」来訪者(獣人、精霊など)です。
 ところが、ユネスコは、類似の世界各地の“来訪神行事”を別個の行事として人類の無形文化遺産の代表リストに登録しています。これは文化遺産の国際理解を歪め、来訪神をテーマとした国際文化の共有、交流の可能性を損ねる恐れがあります。

 デジ研の調査によると、日本や欧州の“来訪神”の様相は、どれも角と牙を持ったオニ様の異形で、ふさふさ(シャギー)の毛皮または蓑(みの)状の外衣に包まれていることが、共通項目として明らかになりました。少なくとも日本と欧州の“来訪神”の行事の趣旨、姿形、季節の変わり目に現れる来訪のタイミングなどの点で、類似の行事といって差し支えないようです。どの国の来訪神もふさふさした防寒形態の衣装により、どこか北方圏に共通のルーツが存在していることが推測できますが、その起源は謎に包まれたままです。

   さらにデジ研の調査によると、日本のオニの姿をした来訪神は、立春前日の節分にも全国各地の「鬼払い、豆まき」行事に出現しています。節分は立春正月の名残として、大晦日と同義であるため、ユネスコ文化遺産の「大晦日のナマハゲ」と「節分の鬼」は、役柄の性格が違うにしても「季節の変わり目」に出現する類似の来訪神と考えられます。
 そればかりでなく、小正月行事で家々に福をもたらす「獅子舞」や「子ども来訪神」も類似の行事と考えられます。子ども来訪神は、子どもたちが神や精霊に仮装して福をもたらす「俵引き」「おかたぶち」「七福神」、大人や子どもたちが馬の精霊に仮装し、豊作予祝のために舞う「春駒」などがあり、無形文化遺産に登録された「来訪神 仮面・仮装の神々」の類似グループに分類できます。

 ヨーロッパでは、冬至、クリスマスから新年にかけてのエピファニー(公現祭)のころ、あるいは立春ごろに行われるカーニバル(謝肉祭)で、告解の火曜日またはマルディグラ(Shrove Tuesday, or Mardi Gras)の行事として、野獣の精霊、悪魔などの姿でふさふさの毛皮やわらの衣装を身につけた仮面・仮装の異人が街に現れ、中心通りを練り歩く来訪行事(家庭を訪問する地域もある)が行われます。これらの異人(オニ)の民俗行事は、クランプス(Krampus)、クケリ(Kukeri)、バブゲリ(Babugeri)、ブショー(Busós)、ハバーガイス(Habergeis)などと呼ばれ、各国の伝統文化行事となっています。

   無形文化遺産のユネスコ申請に際しては法的保護根拠が必要で、日本では文化財保護法による重要無形文化財等の指定が前提とされています。その重要無形文化財の指定の対象は無形の「わざ」そのものとされてきました。しかしながら、ユネスコの人類を代表する文化遺産に登録された「来訪神 仮面・仮装の神々」は、わざではなく、共通の属性を有する文化財に価値を見出す新たなカテゴリーです。
 今回の日本「来訪神」の提案趣旨について、文化庁では以下の3項目の説明をしています。

 

  1. 正月など年の節目を迎えるに当たり、仮面や蓑(みの)笠(かさ)などを身につけて来訪神に扮(ふん)した者が家々を訪れ、子供や怠け者を戒めたり、災厄をはらったりし、人々に幸や福をもたらす行事である
  2. 来訪神行事は伝承されている各地域において、時代を超え、世代から世代へと受け継がれてきた年中行事であり、それぞれの地域コミュニティでは、来訪神行事を通じて地域の結びつきや世代を超えた人々の対話と交流が深められている
  3. 来訪神行事のユネスコ無形文化遺産代表一覧表への記載は、地域の人々の絆(きずな)としての役割を果たしている無形文化遺産の保護・伝承の事例として、国際社会における無形文化遺産の保護の取組に大きく貢献するものである
 重要無形文化財の指定の対象は無形の「わざ」そのものとされてきました。指定にあたっては、「人形浄瑠璃・文楽」「能楽」のような芸能、「備前焼」「彫金」のような工芸技術といった無形の「わざ」が重要無形文化財に指定されてきました。
 ところが、今回の「仮装神行事」の登録にあたって、「わざ」ではなく、上記3項目の属性を新たな文化遺産の価値として掲げ、ユネスコもその申請を認めたのです。つまり、国は「仮装神行事」という概念に文化価値があると判断したわけです。すると、子ども来訪神、獅子舞、春駒など全国で行われている正月、小正月行事も「来訪神仮面仮装の神々」の共通の属性を持った無形民俗文化財であり、一緒に無形文化遺産に申請しなければ矛盾が生じてしまうのです。恐ろしい仮面をつけて「ウオー」と叫ぶ鬼だけが「来訪神」ではないので、文化財保護の考え方を改める必要がありそうです。

   「仮装神行事」の登録理由を認めたユネスコにも、無形文化遺産の登録基準を再検討しなければならない事態が発生しています。なぜならば、「仮装神行事」登録の3つの理由は、そのまま2009年、無形文化遺産に登録されたハンガリーの「ブショーヤーラーシュ」、2015年のオーストリア「エブラルンのクランプス(スカブ)」の2件の仮面仮装行事にもそのまま適用されるからです。
 そればかりでなく、この2件と同じ趣旨で欧州各地の何百、何千という「年の節目を迎えるに当たり、仮面や蓑(みの)笠(かさ)などを身につけて来訪神に扮(ふん)した者が家々を訪れる行事」が行われており、どれもが無形文化遺産と同等の価値をもって、住民や共同体によって守られているのです。

   無形文化遺産とは何なのかという疑問は、再び日本に逆戻りしてきます。「宮崎のカセドリ」は文化遺産となりましたが、それ以外にも岩手、山形、宮城の3県に、同じ属性を共有する類似のカセドリ行事が存在しています(デジ研全国調査データ参照)。特に山形県上山のカセドリは、無形文化遺産に登録されたオーストリアの“わらの仮装精霊”「エブラルンのスカブ」に外見、行事趣旨ともほぼ同じ仮面・仮装の神々です。「上山のカセドリ」が無形文化遺産に登録されない理由を説明するのは難しいと思われます。ユネスコや日本政府は文化遺産の登録により、いったい何を守ろうとしているのでしょうか。

 上記「上山のカセドリ」・「エブラルンのスカブ」の事例ばかりではありません。ユネスコでは、韓国、ベトナムなどの多国籍の小正月行事「綱引き」が文化遺産として登録されていますが、類似の小正月行事である日本の「綱引き」は文化遺産として登録されていません。日韓の「小正月綱引き」に込められた「わざ」「趣旨」はほぼ同一です。そのことは、2016年登録された韓国の無形文化遺産「海女」と類似するが、登録されない日本の海女文化についても言えます。いったい何故なのか。その矛盾にユネスコ、日本政府とも何の疑問も感じていないようです。

   「恐ろしい仮面をつけて仮装し、ウォーと叫べば文化遺産」-そんな単純な理由ではないと思いますが、目の前に現れた表面的な現象だけを見て、文化財、文化遺産の判定をすることは、科学的な調査研究と呼ぶことはできません。その背景にある見えないけれど、確かに存在する本質をどのように究明するのか。現象主義を排して、地方の民俗文化の背景にある真理を求める分析研究のあり方が、今求められています。私たちは、「民俗文化研究のパラダイムを転換するときが来ている」と提唱いたします。

 本調査では、ユネスコをはじめ文化遺産登録がはらむ問題点について、さらにデータ収集を継続してまいります。
(2020年2月20日更新)

○中国の旧正月文化が世界各地に広がる

 2018年2月16日は中国では1年の中で誰もが待ち望む春節(旧正月)。中国の鉄道など交通機関では、2月1日から期間中の帰省・Uターンラッシュに伴う特別輸送態勢「春運」がスタート。中国交通運輸省が発表した春運の旅客輸送量は、3月12日までの40日間にわたり、延べ約29億7000万人(暫定値)となりました。前年から横ばいということです。
 海外旅行にでかける富裕層も増大しています。中国観光研究院と旅行予約サイト・携程旅行網(シートリップ)がこのほど共同で発表した報告書「2018年春節海外旅行情勢予測」によると、春節の長期連休期間に海外旅行へ出掛ける人は延べ650万人に上り、過去最多を更新する勢いということです。
 中国人観光客に人気が高いのはタイや日本、シンガポール、ベトナム、インドネシア、米国、マレーシアなど。タイには避寒目的、日本には雪景色を見に行くのが定番となっているそうです。この中国人の巨大な観光消費ニーズに対応して、日本をはじめ各国の観光、商業者は、中国人向けの旅行プランや観光施設の整備、土産商品開発などに巨額の投資を行っており、春節の中国人旅行客が世界を変えているということです。
 一方、世界第2位の経済大国となった中国の世界進出や各地の華僑コミュニティの拡大により、世界各地で中国新年(Chinese new yearまたはLunar new year)を祝う行事が開催され、アメリカやヨーロッパなどでも獅子舞や竜の踊り、深紅の中国衣装に身を包んだ人々によるパレードが盛大に行われるなど、中国文化が世界に広がっています。日本では2019年1月12日から14日まで、愛知県名古屋市の久屋大通公園で、第13回名古屋中国春節祭が開催され、中国の伝統的な春節(旧正月)の祭事を通じて、日中文化交流を図った。
 中国のIT大手、騰訊控股(テンセント)は17日までに、春節の大みそかに当たる15日に同社の通信アプリ「微信(ウェイシン)」を使い「紅包」と呼ばれる中国のお年玉を送った利用者が6億8800万人に上ったと発表しました。微信紅包で受け取ったおカネは日常の買い物にも使えるため、中国では家族や親戚以外にも、友人や同僚らの間で紅包をやりとりする習慣があります。2017年の春節期間中の微信紅包の発信数は460億通とも言われ、アプリでやり取りされたおカネは巨額な規模となります。
(この項Record china、共同通信47ニュースなどによる)

○ベトナムの旧正月行事「バイチョイ」がユネスコ無形文化遺産に認定

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産保護条約第11回政府間委員会が2017年12月4日から9日にかけて韓国で開催され、ベトナム中部の旧正月の民俗遊び「バイチョイ(Bai Choi)」が世界無形文化遺産に認定された。
 バイチョイは、北中部地方のクアンビン省などの諸省やダナン市などに伝わる音楽や詩、演技、絵画、文学を融合させた伝統芸能・民俗遊び。テト(旧正月)や家族の行事の際に行われる。チョイは小屋、バイはカードを意味し、参加者は歌や音楽が流れる中で進行役の演者に従い、決められた小屋に座り33枚のカードを使ったゲームをする。
 現在バイチョイの芸能団は90チームあるほか、バイチョイを学ぶことができるクラブなども設立され、コミュニティで広く学ばれている。ほとんどは口頭伝承によるが、一部の学校でバイチョイの教育カリキュラムも開設されている。近年では企業や銀行もバイチョイの維持と保存のため、資料収集などを通して伝統継承に協力しているという。
(2018年2月18日更新 この項出典Viet-jo.com)

○山梨大学が山梨県甲州市勝沼の小正月行事を調査

 山梨県甲州市広報によると、山梨大学は2018年年1月12~14日、甲州市勝沼地域を対象に小正月行事「道祖神祭りのどんど焼き」の調査を行いました。同大(の研究室?)は甲州市教育委員会文化財課との共同研究として、「勝沼のブドウ畑とワイナリー群」の文化的景観の学術調査を実施しているということです。全国に誇れる勝沼地域の景観を守り、次世代へつなげるのが、取り組みのテーマだということです。
 甲州市の道祖神祭り・どんど焼きは、1年の厄除けと豊作を祈り、各家の門松や注連飾りを集めて、道祖神の前や広場などにオコヤ(小屋)、ヤグラ(櫓)を作り、1月14日に燃やす風習です。
 調査によると、勝沼地域のどんど焼きのオコヤは、地区ごとに材料・形が異なり、独特な文化が受け継がれていることがわかりました。また、調査では、地域の住民から実際にオコヤの作り方や、小正月行事に関する昔話などの記録を取ったということです。

○イタリアのどんど焼きを確認 エピファニーの火祭りとクランプスの夜

 イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州で2018年1月5日から7日にかけて、エピファニー(Epifania公現祭)の火祭り(pignarûlピニャルル)とクランプス( krampus)の夜が開催されました。リニャーノの海岸からリヴィニャーノコッロレード・ディ・モンテ・アルバーノなどオーストリア国境近くまでの数百か所のコミュニティで、麦わらや木の枝などを積み上げた大きなやぐらに点火され、住民らが神火にコミュニティの浄化を祈りました。
 また、火祭りに先立って、コミュニティの表通りでは、クランプス、またはBefana(ベファーナ)の夜が行われました。ベファーナはホウキに乗った魔女の一種で、神の子イエスを探し続けているとされています。「クランプス鬼」や「魔女」に仮装した住民が「悪い子はいないか」と子供たちを戒めて、火祭り会場まで練り歩きます。

イタリアのどんど焼き・ピニャルルのイメージ(検索語pignarûl) (出典google画像検索結果)


イタリアでのピニャルルの開催状況(出典FRIULANI.NET)


 ピニャルルは、古代ケルトから伝わったとされる新年の神火による悪魔払い儀式の1つです。春分や夏至、冬至の機会にコミュニティの住民が集まって、大きな焚き火を行う習慣は、光の神ベラヌ(Belanu)とその仲間の火の神ベリスマ(Belisma)の崇拝に基づくものとされています。イタリアのpignarûlは古代のケルト人の宗教儀式を受け継いだものとされています。

 ピニャルルの焚き火は、日本のどんど焼き行事と同じ形式、同じ趣旨で行われます。住民は麦わらや木の枝と杭とブドウの枝などで、年末からピニャルルのやぐらを作ります。フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州では、住民にとって火は常に浄化と再生の象徴でした。この風習は、キリスト教が社会を支配するようになっても、今日まで生き残っています。この火祭りは、地域によっては異なる名前が仮定されています。pignarûl、panevin、foghere、fogoron、fugarizze、boreònなどと呼ばれます。
 悪魔払いのため、藁や木の枝を積んだやぐらの頂上に魔女の人形が建てられることがあります。ピニャルルの火とともに焼かれます。日本の小正月行事と同じように、ピニャルルの火で、この1年の農業の「年占い」が行われます。ピニャルルの煙が西へ行くなら、袋を持って世界に移住してください(凶作)。煙が東に行くなら、袋を持って市場に行ってください(豊作)などといいながら、豊凶を占います。

 ピニャルルの伝統では、焚き火の周りに住民全体が参加して、赤ワインにオレンジピールやシナモンなどの香辛料、砂糖やシロップを加えて火にかけ温めたホット・ワイン(グリューワイン)を飲んだり、コーンミール、松のナッツ、乾燥イチジク、レーズンを含むフォカッチャを焼いたりして食べます。
 2020年のピニャルル・ベファーナ焼きは、1月5日の日曜日に開催されました。リニャーノのサッビアドーロ海岸では、ピニャルルの煙は、5000人が固唾をのんで見守る中、西から東に、海に向かってまっすぐに吹きました。したがって、この新しい年は良い年になり、特に夏のシーズンの希望はポジティブだと主催者の評決が出ました。
 イタリアでは、新暦による日本の小正月の火祭り行事とほぼ同じ時期に、日本のどんど焼きや繭玉だんご、甘酒、豊凶年占い、アマハゲ、スネカなどと全く同じ行事を行っていることが確認できました。日本とイタリアでの新年行事が「偶然一致した」とは言えない驚きがあり、さらに調査を継続します。(この項、Messaggero VenetoWEB版2020年1月5日、IL Gazzettino.it,FRIULANI.NET、Wikipediaイタリア語版などによる)
(2020年1月15日更新)

○山梨県博の道祖神祭展であきらかになった明治政府による民俗信仰の弾圧

 山梨県笛吹市の県立博物館では、2018年1月2日から2月26日まで、シンボル展「よみがえる! 甲府道祖神祭り」を開催しています。甲府中心街の商家から発見された江戸時代の小正月行事「道祖神祭」の祭礼道具を中心に展覧し、明治初期に政府の取り締まりで廃止されてしまった、往時の豪華な道祖神祭の様子を再現しています。<BR>  博物館のシンボル展資料によると、甲府の小正月行事「道祖神祭」は、江戸時代後期には「当国一大盛事」と評されるほど盛大な行事でした。中心街の商家では歌川広重など有名な画家に描かせた幅10メートルもの長大な「道祖神幕絵」が数百枚も張り巡らされ、甲府城下の各町を彩っていました。さらに町の辻々には道祖神の祭場が設けられ、大幟(のぼり)や吹き流し、繭玉などで飾った「御山(おやま)飾り」が建てられました。このような華美な祭礼は全国的にみても非常に珍しいもので、農村部での農耕儀礼が洗練された、都市型祭礼として発展を遂げていました。
 ところが、この盛大な小正月行事も明治5年、県令の通達した「道祖神祭礼取締」により、突然廃止されることになってしまいました。同年の暮れには新暦(太陽暦)への改暦も行われ、本来の旧暦正月より2ヶ月近くも元日が繰り上げられてしまうなど、明治6年以降の地域の年中行事は大混乱となってしまいました。
 政府による民俗信仰への弾圧は、国家神道の樹立と深い関係がありました。国家神道では、天皇を現人神(あらひとがみ)としたうえで、全国の神社を国の直轄とし、全国民を氏子とする祭政一致国家の形成を目指していました。国家神道には教義がなかったため、合わせて教育勅語が渙発されて、天皇、皇祖皇宗への崇拝が強調されました。
 甲府道祖神祭では、この1年で町内での嫁入りや出産などで新たに加わった住民について「道祖神の氏子入り」を認め、その際に祝儀を受納していました。地域の風土に根ざした土俗の神様を国民が身近に信仰し、勝手に氏子入りをすることは、国家神道にとって非常に都合の悪いことでした。甲府市では、「道祖神祭礼取締」によって、道祖神信仰と結びついていた小正月行事が廃止され、道祖神の石祠なども撤去されました。
 しかし、政府の取り締まりにもかかわらず、甲府市は別にして、全国でどんど焼きをはじめとする小正月行事が現在まで守られています。この理由を推測すると、民衆側では、政府に対抗するため、どんど焼の起源をことさら「宮中で行われている左義長行事である」と言い張り、また火祭りが道祖神祭として行われていた山梨県などでは、道祖神の祭神は「猿田彦命(さるたひこのみこと)」「天宇受売命(あまのうずめのみこと)」だと国家神道が認める祭神を唱えることで、政府の弾圧を逃れてきたのではないか、と思われます。

○茨城県土浦市、どんど焼き廃止 プラごみ分別「困難」のため

 土浦市は、同市佐野子の桜川河川敷で、市の主催事業として行ってきた「どんど焼き」を2018年から取りやめました。30年以上続く伝統行事だが、燃やす正月飾りに含まれるプラスチックを完全に分別することが難しいと判断したということです。

 報道によると、どんど焼きは市立博物館が開催し、教育普及事業として、小正月(1月15日前後)にどんど焼きを桜川河川敷で毎年行ってきました。市民数百人が、持ち寄ったしめ縄や門松などの正月飾りを焼き、おき火で餅を焼いて食べていたということです。

 茨城では、どんど焼きは「鳥追い」「ワーホイ」とも呼ばれ、県内各地で行われています。どんど焼きは「火にあたると風邪をひかない」という言い伝えがあり、県内各地で行われていましたが、土浦では、次第に廃止されるようになったため、伝統文化継承のため、同市郷土資料館が1980年ごろに復活。市立博物館が引き継いできました。

 しかし同館関係者は「近年、正月飾りにプラスチックなど屋外で燃やせない素材が多く使われるようになり、持ち寄る市民にも分別を呼び掛けてきたが、全てを分別して燃やすことが困難になった。公的機関の主催としては廃止せざるを得ない」と、どんど焼き廃止の理由を説明しています。
 同館はホームページで、市民に対し、正月飾りは分別の上、家庭ごみとして自治体の収集に出すなど各自での対応を求めています。

 一方、北海道苫小牧市の錦岡樽前山神社では、毎年1月15日の小正月に行っている「どんど焼き」に近年、正月飾り以外の家庭の不要品が持ち込まれるケースが増え、神社関係者を困惑させている。2018年も写真や雑誌の束といった家庭ごみのほか、人形なども収集所に運び込まれた。焼却できない物は業者に依頼して処分するしかなく、市民にモラルの向上が求められているということです。

 同神社ではどんど焼きの1週間ほど前から収集小屋「松納庫」の鍵を開け、昼夜を問わず自由に正月飾りなどを持ち込めるようにしています。正月飾り以外にも古札やお守りなど神社に由来するものも受け入れています。
 ところが、収集小屋を管理する氏子総代と呼ばれる地域住民が点検すると、大量の鏡餅をはじめ年賀状、白装束、線香の燃え残り、カレンダー、財布など家庭の不要品が多数持ち込まれるようになり、ケース入りのひな人形や木製のこけしまで持ち込まれていました。過去にはおむつや遺影、位牌(いはい)が持ち込まれていたこともあるということです。
 氏子総代の男性らは「どうしてこんなものが…」とあきれながら、ごみの分別に手を焼いているということです。 (この項茨城新聞、苫小牧民報による)

○大阪、長崎、横浜で旧暦正月の春節、元宵節を祝う風習が盛り上がる

 大阪市と台湾の台南市による光の交流イベント『台南・光の廟埕(びょうてい)』が、2017年12月14日から25日まで「リバーサイドパーク」(大阪市北区)で初めて開催されました。中華文化圏での小正月にあたる『元宵節(げんしょうせつ)』を再現し、大阪の夜空が灯籠(ランタン)で彩られました。
 このイベントは、大阪・光の饗宴実行委員会が開催した「OSAKA光のルネサンス」の記念行事で、光の交流として、台南市の小学校、中学、高校、大学生や市民が作った約1000個のランタンで会場を飾りました。ランタンには、台湾の風景やグルメなどがカラーで描かれています。元宵節とは、正月の満月の日(旧暦の1月15日)を祝う中華圏の風習。
 一方、2018年の旧暦正月を祝う伝統行事「在阪華僑大阪春節祭」が2月18日、大阪市浪速区の大阪中華学校で開かれました。快晴の空の下、来場者が獅子舞などの華やかな演芸や屋台の味を通して新春を満喫しました。
 この春節祭は、中華民国留日大阪中華総会などで構成する同祭実行委員会が台湾系在阪華僑の子孫や府民らに中華伝統文化を伝える親善の機会として開催し、今年で18回目。会場では、今月6日に台湾東部花蓮県で発生した大地震の義援金募金箱も設けられました。
 爆竹のごう音を合図に春節祭がスタートすると、同校生徒による獅子舞が登場し、太鼓のリズムに合わせて勇壮華麗な演技を繰り広げた。舞台では民族舞踊や二胡演奏、中華神話の子どもの守護神「三太子」が披露された。会場には、蒸したての豚まんや中華麺などの飲食売店が出店し、来場者に提供されました。
   横浜中華街では、2018年の旧暦正月・春節を祝う行事が2月16日から3月2日まで開催されました。横浜中華街では中国と同じ「春節」を楽しめるよう1986年より「春節」を開催しており、今回で32回目を迎えます。2月16日の春節当日には、採青(ツァイチン)と呼ばれる獅子舞や龍舞、皇帝衣装のパレード等中国の伝統文化が紹介されました。春節は今や横浜の観光を代表する行事ともなり冬の風物詩ともなっているということです。
 春節に先立って旧暦大晦日にあたる2月15日の深夜から横濵關帝廟・横濱媽祖廟で、多くの市民や観光客によるカウントダウン行事が行われました。また最終日の3月2日には元宵節燈籠祭が行われました。

   長崎県長崎市では、長崎ランタンフェスティバルが2018年2月16日旧暦元日から旧暦小正月(元宵節)過ぎまで17日間にわたって、長崎新地中華街の湊公園など中心街で開催されました。
 ランタンフェスティバルは、もともと長崎新地中華街の人たちが中国の旧正月(春節)を祝う行事でしたが、市が1994年、長崎新地中華街商店街振興組合と連携してスタート。長崎の冬の一大風物詩として全国的にその名が知られるようとなりました。15日間の期間中、街中に飾られる約1万5000個の極彩色のランタン(中国提灯)と、各会場の大小さまざまなオブジェが街を幻想的に彩り、訪れる人々の心を魅了します。2018年には過去最高となる延べ106万人が訪れたということです。

 一方、2017年には、富士山麓の山梨県富士吉田市の道の駅富士吉田で、「富士吉田スカイランタン祭り」が12月23日(土)に開催されました。午後3時から開場し、地元名物の吉田のうどん、ホットワインなどを販売し、午後5時からLEDランタンおよそ200個を空にあげた。3000人が来場したということです。
 また、静岡県富士市でも2018年2月23日(金)午後5時から7時まで、「富士スカイランタン紙ほたる」が開催されました。 会場はふじのくに田子の浦みなと公園で、2・23の「富士山の日」「工場夜景の日」にちなんだイベント。LEDランタン223基を手にもって掲げた(強風のため)。
 これらの富士山のランタン祭りは春節、元宵節とは関係なく、地域の観光イベントとして企画されたもので、海外文化の伝播と受容例として興味深い。
oo] (この項出典:横浜市役所公式HP、長崎市公式観光サイト、大阪日日新聞など)(2018年3月10日更新)

○「来訪神」鹿児島2件追加 ユネスコ無形文化遺産に再申請

 報道によると、政府は平成29年3月2日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産の候補として、神の使いにふんした住民が地域を巡り歩く8県10件の伝統行事「来訪神 仮面・仮装の神々」を申請することを決めました。月内にユネスコへ申請書を提出、2018年11月ごろに開かれるユネスコ政府間委員会での登録を目指しています。
 ユネスコ無形文化遺産の候補10件は「吉浜のスネカ」(岩手)「米川の水かぶり」(宮城)「男鹿のナマハゲ」(秋田)「遊佐の小正月行事」(山形)「能登のアマメハギ」(石川)「見島のカセドリ」(佐賀)「甑島のトシドン」(鹿児島)「薩摩硫黄島のメンドン」(同)「悪石島のボゼ」(同)「宮古島のパーントゥ」(沖縄)。
 このうち「甑島のトシドン」は2009年に無形文化遺産に登録されています。政府は当初、これに鹿児島以外の7県の行事を加え、2017年のユネスコの審査で1つの遺産として登録することを目指していました。しかし審査が1年先送りされたことから、新たに国重要無形民俗文化財になる薩摩硫黄島のメンドン(鹿児島)、悪石島のボゼ(同)の2行事を追加し、再申請するということです。

(2017年3月3日更新)

○「小正月行事が少子高齢化で消える動き」と報道

 日本国内の少子高齢化による人口減少問題の影響は、地域社会の伝統行事の伝承にも影響が出ています。「山梨県内で高齢化による担い手不足などを理由に、小正月行事を取りやめる動きが出ている」と、山梨日日新聞が社会面で報道しました(2017年1月14日付け)。報道によると、北杜市明野町小笠原の集落では今年、住民らが約40年続いてきたご神木「おやなぎさん」の設置を見送ったそうです。
 また、宮城県東松島市宮戸の月浜地区に約200年前から受け継がれ、国の重要無形民俗文化財に指定されている小正月の伝統行事「えんずのわり」が存続の危機に陥っていると報道されました(読売新聞オンライン2017年01月07日付け)。

 北杜市明野町の「おやなぎさん」は道祖神祭りの一環で、五穀豊穣や家内安全を願って設ける飾り。青竹を縦に割いて柳に似せ、短冊状に切った色紙などを貼って作ります。明野町では多くの集落で設置されていますが、明野町小笠原の正楽寺集落は今年、設置を見送りました。
 地元の正楽寺公民館によると、同集落では一時中断した行事を1970年代以降に復活させ、毎年1月10日ごろにおやなぎさんを作り続けてきた。だが、近年は地元を離れて暮らす若年世代が増え、高齢者の割合が高くなり、制作作業に当たる住民が確保しにくい状況だったということです。
 今年はご神木を立てずに、8日に地元住民が道祖神前に集まって祈願し、小正月行事を簡素化しました。同公民館の館長は「地域行事を存続させるには厳しい時代だ」と話しているそうです。

 一方、東松島市の月浜地区に伝わる「えんずのわり」は中学生以下の男子が担っていますが、東日本大震災の津波被害の影響で地区内からの転出が相次ぎ、今年の参加者は過去最低の3人でした。昨年には地元の小学校が閉校するなど今後も子どもの増加は見込めず、関係者は「行事は地域のシンボルで年に1度の住民たちの楽しみだが、このままだと来年以降も続けられるか分からない」と頭を抱えるということです。

 山梨県都留市十日市場でも小正月行事の「梵天竿」の存続の可否について、地元住民の検討が続いているということです。その理由は「担い手が高齢化している状況では安全が確保できないから」と報道されました。
 十日市場で行われている小正月行事「梵天竿」は、飾り付けをした高さ約10mのヒノキを立てる行事。近年は竿の立て方や飾り付けの手順を知る住民が減少し、担い手の確保が課題になっていて、さらに森で高木を伐採し、集落内に運び出して、立ち上げる作業は危険が伴うことも大きな理由になっているようです。
   今年は、市内の別の地域の住民からも梵天竿を存続させてほしいと要望があったことなどを踏まえ、例年通り梵天竿を設置しましたが、十日市場自治会の会長は「都留市の伝統行事として残したい気持ちはある。だが、時代の流れもあり、いつかはやめる決断を迫られる時がくるかもしれない」と話しているということです。

   その一方で、福島県喜多方市岩月町の稲田行政区では、小正月の伝統行事「歳の神(さいのかみ)」が15年ぶりに復活し、地区住民らが無病息災、五穀豊穣(ほうじょう)を祈りました(福島民友ネット2017年1月16日付け)。報道によると、稲田わかもの会が「市ふるさと創生事業」を活用し、復活させました。
 都市部でも東京都西東京市では、平成28年度伝統文化等継承事業として、市内のどんど焼き行事に補助金を交付し、故郷の文化として根付かせること、次の世代に継承することを決定しました。この経費補助により2017年1月8日、市内の明保中学校校庭など3カ所で、地域住民が実行委員となり、どんど焼きが行われました。行事消滅の危機の一方で、再生の明るい兆しも出ているようです。

 こうした少子高齢化による伝統行事の存続問題について、山梨県立博物館の学芸員は、山梨日日新聞の取材に答えて「行事を中断する動きの背景には、集落からの若者世代の流出や、祭りの準備のために休みが取得しにくくなるなどの社会的な問題がある。将来再開される可能性も考えて、祭りの様子を記録しておくのも一つの手段だ」と話しています。

(2017年1月15日更新)

○日本のどんど焼き、盆の迎え火、韓国のタルジプ焼きの淵源は古代ペルシャの拝火行事?! 

 NPO法人地域資料デジタル化研究会(以下デジ研)の調査によると、イランなど中央アジアの春分元日「ノウルーズの祝祭(ペルシャ語:نوروز  [nouˈɾuːz]Nowruz; 英語 "New Day")」(2016年は3月20日)では、日本のどんど焼きのように「焚き火」が重要な役割を果たしていることが確認できました(下記に関連記事)。イランではノウルーズの前の「赤い水曜日のイブ」(チャハールシャンベ・スーリー chahar shanbeh suri) (ペルシャ語: چهارشنبه سوری)で、家の前か、みんなが集まる街の通りでイバラなどの乾燥植物を用いて焚き火が燃やされ、人々は火の上を飛び越える「火渡り」を行います。火渡りの儀式では「私にあなたの美しい赤をください。私の(肌の)蒼白(痛み、病気)をもっていけ」と唱えながら、新年の到来を祝い、この1年の健康を祈願します。

  (イランの“どんど焼き”、チャハールシャンベ・スーリーのイメージ:google画像検索「چهارشنبه سوری」の出力結果による)

    このほか、ノウルーズでは、焚き火による健康祈願のしきたりのほか、この1年の豊作を祈願、大掃除による家屋の浄化、先祖魂の来訪・もてなしと送り火、甘い焼き菓子などを食べて招福、「火振り」による畑の浄化-などの一連の行事が行われています。

 ノウルーズの淵源であるゾロアスター教は、紀元前六世紀頃のペルシャの予言者ゾロアスター(ツァラツストラ)を開祖とする宗教。主神アフラ・マズダの名から「マズダ教」ともいい,火を神聖視するため「拝火教」とも言われます。しかし、ノウルーズの伝統は3000年前からともいわれ、ゾロアスター教より前から行われていた可能性があるようです。

 ゾロアスター教では、「ファーバハール」と呼ばれる先祖の魂が非常に尊ばれます。春分の日のノウルーズになると、先祖の魂が、生存する家族のところを訪れ、最終日の夜に天国へと戻ると信じられています。このとき家族は、先祖の足元を明るくするために家の屋根に火を灯し、来年もまた帰ってくれるよう、先祖にお願いをします。
 これを表面的に観察すると、日本の春分の日の「お彼岸行事」と古代ペルシャの「ノウルーズ」は、同じ春分の日にまつわる先祖崇拝の行事とみることができます。時系列でみると、日本のお彼岸行事はシルクロードで繋がっていた古代ペルシャのノウルーズに起源を求めることが可能です。また、先祖崇拝と拝火行事が結びつく形式は、ノウルーズと、日本の小正月や盆の「送り火」と全く同じ慣習に見えます。

 そのなかで、古代のササーン朝ペルシャから伝承されている「チャハールシャンベ・スーリー」では、神聖な火の力によって新年を祝い、1年の健康を祈願することが数千年の民衆の伝統文化として守られています。行事の趣旨は「新年新春の拝火、その1年の健康祈願」がセットになっていることがポイントです。

 デジ研の調査では、日本の古代には、正月行事が太陰暦新年の迎春の火祭り行事として行われていたことが分かっています(望正月=満月の日を元旦とする)。さらに、イランのチャハールシャンベ・スーリーの拝火行事と同様の「先祖魂の来訪・もてなしと送り火行事」が現代の日本でも行われていることが明らかになっています。
 岡山県地域情報サイト「GASPO」の生活情報「お盆の迎え方豆知識」によると、盆行事で先祖を迎えるためのしきたりとして、家の前などで、オガラや稲わらで焚き火を行って、先祖の迎え火とし、その火の上をまたぐ、あるいは飛び越えることが、岡山のしきたりになっています。これはペルシャの伝統「ノウルーズの火またぎ」と同じしきたりです。
 このほか、東京など関東地方でも、盆の迎え火、送り火をまたぐことが先祖迎えのしきたりになっている地域があります。盆の拝火行事では、「迎え火を3回またぐと無病息災でいられる」という健康祈願の言い伝えもあり、ササン朝ペルシャの拝火行事と同じ趣旨であるといえそうです。これらの行事の趣旨の一致は単なる偶然と言ってよいのでしょうか。

   一方、2016年3月20日、埼玉県蕨市の蕨市民公園で、在日クルド人による春分新年祭「ネウロズ」が行われました。ネウロズはイランのノウルーズと同様の新年祝祭で、クルド日本文化協会が主催し、焚き火を囲んで新たな年の到来と「抑圧からの抵抗と自由」とをみんなで祝い、ダンスや歌を楽しみ、蕨市民とも交流しました。ネウロズの伝承によると「火」は自由の象徴とされています。この祝祭には、蕨市と川口市を中心に全国で暮らすクルド人約1000人が色鮮やかな民族衣装で参加しました。この祝祭は、シリア内戦などで日本に逃れてきた人たちなどが、クルドの伝統文化を日本に持ち込んできたものです。異国の民俗文化がどのように他国へ伝播されていくのかを示した事例として注目できそうです。

 以上の観察をもとに時系列で分析しますと、ペルシャの拝火と健康祈願の伝統行事「チャハールシャンベ・スーリー」と同様の火祭りは、ユーラシア大陸の各地に存在しています。日本の「どんど焼き」と「盆の迎え火・送り火」、韓国の「タルジプ焼き」、イタリアの「ピニャルル。ドイツの「ヴァルプルギスの夜」、スウェーデンの「ヴァルボリ焼き」、英国の「インボルグ、ベルテーン火祭り」などの新年新春祝祭の原型となって、数千年の時を超えて、各国の国民的行事に波及している可能性があります。ここでは日本のどんど焼きなど、各国の行事の趣旨が古代ペルシャの「新年・新春の拝火」で一致しているようにみえます。

 このイランなどの「チャハールシャンベ・スーリー」を含む新年新春行事「ノウルーズ」は2009年、国連のユネスコ無形文化遺産に登録され、世界の文化の多様性及び人類の創造性に対する重要な文化遺産とされています。ノウルーズを新年行事として共有する登録国はアフガニスタン、アゼルバイジャン、 インド、イラン、イラク、カザフスタン、キルギス、パキスタン、タジキスタン、 トルコ、 トルクメニスタン、ウズベキスタンの12か国もの多くの国々に及びます。(この事例では民俗文化行事について人類文化の多様性をみるはずの無形文化遺産が、民俗文化行事の同質性、共通性をみています)

 しかし、「チャハールシャンベ・スーリー」が果たして上記の12か国を超えて、極東アジアの日本や韓国にまで到達したのかどうか。日本の独自文化とされてきた「どんど焼き」「盆の迎え火・送り火」の淵源とするには証拠となるデータが不足していて、今後の研究課題として記しておくこととします。(下記の考察篇に関連記事を掲載)
 (出典:2016年3月20日付けIRIBイランイスラム共和国国営放送・国際放送ラジオ日本語版、wikipedia英語版・日本語版「Nowruz」及び「復活祭」、宮内庁正倉院公式サイト、アメリカvox.com、ユネスコ・アジア文化センター第3 回無形文化遺産保護のための集団研修公開資料「ノウルーズとイラン政府」、岡山県の地域情報サイト「GASPO」、日経ビジネスweb版記者の目「なぜ埼玉県南部にクルド人が集まるのか?」、YAHOO知恵袋サイト「マナー、冠婚葬祭>年中行事」などのWEBサイトによる)

(2016年10月15日更新)

○国連が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」との関連でノウルーズを祝福

 2016年の中東の春分元日行事ノウルーズ( نوروز  Nowruz)を迎えるにあたって3月21日、国連は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」最初の年に関する声明を発表し、次のようにノウルーズを祝福しました。

 「『持続可能な開発のための2030アジェンダ』最初の年にあたって、国連は、古代からの伝統であり、
 現代的な関連性がある『ノウルーズ』を祝います。ノウルーズは、よりよい未来への集団の旅に
 誰一人取り残さないという国際社会の決意を強化するための機会となるものです。」

 国連の潘基文事務総長は声明の中で『すべての人々のための尊厳の生活のためのビジョン』を強調し、『私たちはノウルーズを祝うすべての人々が喜びと意味をもって祝うことができるようにしましょう。そして、世界中の人々に、ノウルーズの本質的なメッセージである希望と生命の再生を広めましょう』と語りました。
(出典:United Nations News Centre公式サイト「Nowruz is an opportunity to bolster UN goal to 'leave no one behind' on road to sustainable future -Ban」)
(2016年4月4日更新)

○日本のどんど焼きは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を祝福する

 2015年9月25日~27日、ニューヨーク国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、193の加盟国によって「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transforming Our World:2030 Agenda for Sustainable Development(注参照)」が採択されました(日本からは安倍総理大臣が出席)。この2030アジェンダは「誰一人置き去りにしない(leaving no one left behind)」ことを掲げ、国際社会が2030年までに貧困を撲滅し、持続可能な開発を実現するための重要な指針である17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げています。
 (注)外務省2030アジェンダ特集サイト http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/gic/page3_001387.html

 2016年は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にとって、キックオフの最初の行動の年にあたります。その記念すべき年に、上記の国連の潘基文事務総長が「ノウルーズ」に寄せた声明は、日本のどんど焼きに込められた祈りが持つ本質的な意味について、重要な示唆をもたらしています。

 上記トピックでは、潘事務総長が、中東の春分元日の新年行事である「ノウルーズ」の伝統を「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と関連づけて、現代的な意義を強調しました。2030アジェンダに先立って、国連は2010年に「ノウルーズ国際デー」を正式に承認し、「希望と生命の再生」という、ノウルーズの基本的なメッセージを世界に拡大すべきとしています。

 一方、デジ研の全国調査により、日本の小正月行事は、その1年の(1)人々の無病息災・子孫繁栄、(2)農林漁業など地域の生業(なりわい)の豊穣と繁栄、(3)地域の防災(厄災祓い、悪魔祓い)と安全−の3点を中心に祈念し、行事の締めくくりとして、住民が一堂に会して「どんど焼き」の火を囲み、人々のきずなを確認するコミュニティ行事であることが明らかになっています。この行事は全国各地で数百年の伝統があります。

 以上の小正月行事の3つの祈りは、国連の提唱する「社会の持続可能な発展、開発に何が必要なのか」というSDGs要件の核となる部分をはっきりと提示しています。
 つまり、社会が持続可能性をもつということは、その最小単位である集落を構成する人々が健康で、子宝に恵まれ、日々のなりわいが豊かで、暮らしが自立していることなのです。さらに災害には住民が力を合わせて立ち向かっていくという地域の合意が形成されていることが重要であり、しかも、これらの重要な要件について、集落内のすべての住民が継続的に確認しあう場が設けられていることが必要です。そして、その「場」とは、年中行事のどんど焼きであり、小正月の一連の関連行事だったのです。

 小正月行事「どんど焼き」は、国連の提唱する「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の趣旨を先取りする伝統行事として、日本国内の各地で守られ、継承されてきたということができます。私たちは、現代的な意義付けをこめて、小正月行事を「地域住民が集落の持続可能な発展への取り組みを儀礼化した地域文化遺産」と定義することができます。
 イランの新年行事「ノウルーズ」は2009年にユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、私たちは、日本の小正月行事もノウルーズと同等以上の文化性と精神性を持っていると言わなければなりません。私達は、小正月行事の現代的な意義を認識し、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を祝福しなければならないと思います。

 どうやら、私たちは小正月研究の成果として、ひとつの到達点を見出したようです。しかし、私たちは、まだまだ多くの研究課題を抱えたままです。今後もこの調査は継続されます。
 (出典:United Nations News Centre、国連「SUSTAINABLE DEVELOPMENT KNOWLEDGE PLATFORM」特設サイト、外務省「持続可能な開発のための2030アジェンダを採択する国連サミット」WEBサイトなどによる)
 (2016年4月10日更新)

 ○インドやネパールで豊作祈願、悪魔払いのホーリー祭祝う 

 インドやネパールなどで新春の訪れを祝うヒンドゥー教の春祭り「ホーリー祭」(Holi)は、3月24日の午前中にクライマックスを迎えました。ホーリー祭は、インド暦第11月の満月の日の移動祝祭で(2016年は3月24日、2017年は3月13日)、午前中がクライマックスとなります。祭りの間は、知人だけでなく見知らぬ人にも色粉を塗りつけたり、色水をかけ合ったりして祝います。
 ホーリー祭はもともと豊作祈願の祭りでしたが、その後クリシュナ伝説などの各地の悪魔払いの伝説などが混ざって、現在のような町ぐるみのどんちゃん騒ぎとなったということです。
 ホーリー祭の特徴である色粉や色水を掛け合う由来は、カシミール地方の伝承でこの日に人家に押し入ってくる悪鬼ビシャーチャを追い払うため泥や汚物を投げつけたのが始まりとされます。そのため黄色は尿、赤は血、緑は田畑を象徴すると言われています。色水は色粉を水に混ぜて作るということです。
 祭りの前週から繁華街には色粉や水鉄砲(主に子供が使う)を販売する露店が多数出店します。人々は色粉などを購入して準備し、地域の人たちが集まって祭りが始まると、友人、知人はもとより通りがかった見知らぬ人にまで顔や身体に色粉を塗りつけたり、色水を掛け合ったりします。色粉を塗りあった後は「ハッピー・ホーリー」と言いながら抱き合うことも多いということです。

 一方、インドネシア・バリ島では2016年3月9日、「サカ暦」1938年の新年元日ニュピ(Nyepi)を迎え、ヒンドゥー教徒にとって、精神修養に専念する最も重要な日として、人々は瞑想して悪霊が去るのを待つ、「沈黙の日」を行いました。ことしのニュピは皆既日食と重なり、神秘的な日となりました。前日には、伝統行事オゴオゴが行われ、人々はオゴオゴという悪霊(悪鬼)の姿をした人形を引き回して町中を練り歩いた後、町から悪魔や災いなどの厄を払い、清めるためにオゴオゴを寺院で燃やしました。
(出典:AFP通信afpbb日本語版色「鮮やかな粉が舞う、ヒンズー教の春祭り『ホーリー』 インド東部」、TheJakartaPost「Nyepi observed in tolerance」March 10 2016、wikipedia日本語版「ホーリー祭」などによる)(2016年3月24日更新)

○イランなど中近東で「春分元日」の新年=ノウルーズ祝う 

 地域資料デジタル化研究会の調査によると、イランなど中近東の諸国では、2016年の春分の日(vernal equinox)にあたる3月20日、イラン暦ファルヴァルディーン月1日(元日)として、春の新年を盛大に祝いました。この祝祭はノウルーズ(Nowruz=新しい日、英語ではNew Day)と呼ばれています。古代のゾロアスター教を起源として、3000年以上の伝統を有するという祝祭を今日も祝っているのは、イランほかアフガニスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、イラク、アゼルバイジャン、トルコの国々です。
 ノウルーズは春の訪れとともに始まることから、人々は、自然と同様に、服や身の周りのものを新しくして、新年を迎えようとします。ノウルーズの時期、人々はみんなが、喜びにあふれ、親戚に会いに行って、一緒に楽しく過ごすとされています。(実際には中東紛争の影響でそうでないところもあるようです)

   ノウルーズは人類の文化遺産としての価値も高く評価されています。国連では2009年、ノウルーズを正式にユネスコ無形文化遺産に登録しました。ユネスコは、この年にハンガリーの「ブショーヤーラーシュ」、日本の「甑島のトシドン」の2件の新年祝祭も同時に登録し、人類の「迎春」または「頌春」の新年行事に高い評価を示しました。

   さらに国連総会は、ノウルーズが宗教や国境を越えて、さまざまな民族を団結させることにより、世界における人間的な価値の拡大を促進するとして、2010年に「ノウルーズ国際デー」を正式に承認しました。「希望と生命の再生」という、ノウルーズの基本的なメッセージを世界に拡大すべきだと国連では認識されました。それは破壊と混迷の度合いを深める中東の紛争解決への願いが込められているようです。
(出典:IRIBイランイスラム共和国国営放送・国際放送ラジオ日本語版)(2016年3月24日更新)

○TBSテレビ Nスタ・ニュースワイドで、デジ研小正月行事「どんど焼き」全国調査の成果が紹介されました

 2016年1月15日放送のTBSテレビ報道番組 Nスタ・ニュースワイドは、『正月飾りどう処分?火祭り「どんど焼き」』というタイトルで、NPO地域資料デジタル化研究会の小正月行事「どんど焼き」全国調査成果を紹介しました。 (2016年1月15日(金) 15:53~19:00)
 番組公式サイト http://www.tbs.co.jp/n-st/
 番組では、井尻事務局長が電話取材に答えて、まず全国の小正月火祭りのさまざまな呼び名について紹介しました。また、小正月の火祭り行事は、韓国でも行われており、集落の人々が持続的な発展のために、年頭にあたって、心を一つにして地域繁栄、地域防災と各家庭の安心安全を祈願する趣旨が共通して行われていることを報告しました。さらに「地方創生」と対比しながら、どんど焼きの持つ現代的意義などについて解説しました。
番組の内容について、以下のgooテレビ番組アーカイブに公開されております。
https://tvtopic.goo.ne.jp/program/tbs/22712/926217/

Nスタ・ニュースワイド/ホリダス (ニュース)
「あなたの街のどんど焼き」の要約から
 1月15日は小正月。正月飾りを処分する行事はどんど焼きと呼ばれる。
 どんど焼きは小正月に全国各地で行われる伝統行事。どんど焼きは石川県金沢市では「左義長」と呼ばれている。長崎県長崎市では「おんのほね」と呼ばれ鬼の骨がなまったものと言われている。茨城県城里町の桂小学校では「ワーホイ」と呼ばれていた。ワーホイとは稲などを食べる鳥を追い払う意味があるという。ワーホイとは鳥追いの掛け声だとわかったが語源は判明しなかった。
 全国で名前が違う理由について、地域資料デジタル化研究会の井尻俊之さんは自然発生的に生まれてきていて各地によって事情が違うので名前が変わってきていると話した。どんど焼きは都会ではあまりみられない行事となっている。神社や寺でも火事の心配や近所の煙害の苦情からお正月飾りを預からないところもあるという。
 どんど焼きには年神さまのお見送り、豊作祈願、防災祈願、子孫繁栄、迎春の喜びを分かち合う目的があるという。NPO地域資料デジタル化研究会が全国の呼び方を調べたところ1位はどんど焼きで、とんど焼き、左義長など様々だった。山形県の一部ではヤハハイロ、富山県ではおんづろこんづろ、長崎県では三九朗と呼ばれている。
 新潟・阿賀町では高さ34m10cmの日本一高いどんど焼きが行われた。徳島・美馬市では20m四方の日本一大きいどんど焼きが行われた。
 海外では、韓国では旧暦の小正月にタルジブ焼きが行われ無病息災・豊作祈願を行う。スウェーデンではバルボリ焼きという春を歓迎して悪霊を追い払う火祭りが行われる。
 番組ではスタジオで、自宅でのお正月飾りの処分方法を説明した。紙の中央にお正月飾りを置き、塩を左右と中央に置き、紙で包んでゴミに出す。すでにゴミに捨ててしまったという人は神棚や東の方向に謝罪することをすすめた。

○正月のオニ「ユネスコ文化遺産」 9自治体が一括登録目指す 欧州にも類似行事

 大みそか、正月、小正月に、住民が神の使いとしてオニなどに仮装して家々を訪ね、厄払いや無病息災を願う全国各地の「来訪神行事」を、文化庁と関係7県の9自治体が、2016年3月末までに国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に一括登録を申請しました。地域の若者減少などで行事の継承に課題を抱えるなか、「ユネスコ文化遺産」登録で、新たな担い手確保の弾みにしようという狙いもあるということです。

 国の文化審議会は2月17日、2016年申請のユネスコ無形文化遺産候補として、「男鹿のナマハゲ」(秋田)など7県の行事を申請することを決めました。2009年にユネスコ文化遺産に登録済みの「甑(こしき)島のトシドン」(鹿児島)に、国の重要無形民俗文化財になっている全国の類似行事を追加し、「来訪神:仮面・仮装の神々」の名称で計8件の一括登録を求めるということです。
 ユネスコによると、2016年の審査結果として、日本関係では、「山・鉾・屋台」を巡行させる祭礼の登録を決めた。登録が決まったのは、「角館祭りのやま行事」(秋田県仙北市)、「秩父祭の屋台行事と神楽」(埼玉県秩父市)など33行事。
 「来訪神行事」の審査は18年に先送りされたということです。
 
  男鹿のナマハゲ(出典:平成23・24年度文化庁文化遺産を活かした観光振興地域活性化事業・男鹿市文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業実行委員会「男鹿のナマハゲ」)

 家庭にやってくるオニなどに仮装した来訪神行事は、日本では「歳神」とも考えられており、秋田県男鹿市のナマハゲや岩手県大船渡市「吉浜のスネカ」など全国8地域で行われ、いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されています。
 このうち、「甑島のトシドン」(鹿児島県)が、2009年に単独でユネスコ無形文化遺産に登録されました。ところが、政府が「男鹿のナマハゲ」を2011年に登録審査を申請したところ「(トシドンと)類似の行事だ」との理由で認められなかったということです。このため、政府は改めて、国の重要無形民俗文化財になっている類似行事を追加し、2016年に「来訪神:仮面・仮装の神々」の名称で一括登録を求めることになりました。

 無形文化遺産を目指す来訪神行事は▽男鹿のナマハゲ(秋田県男鹿市)▽遊佐のアマハゲ(山形県遊佐町)▽「吉浜のスネカ」(岩手県大船渡市)▽「米川の水かぶり」(宮城県登米市)▽「能登のアマメハギ」(石川県輪島市・能登町)▽「見島のカセドリ」(佐賀県佐賀市)▽「甑(こしき)島のトシドン」(鹿児島県薩摩川内市)▽「宮古島のパーントゥ」(沖縄県宮古島市)。いずれも国重要無形民俗文化財。

 各地の行事は今、少子高齢化のなかで、若者の減少による担い手不足という共通の課題を抱えています。今回のユネスコ文化遺産への申請は、担い手不足を解消に向けて、大きな効果があると期待されているようです。共同通信によると、男鹿市生涯学習課は「ユネスコの無形遺産として評価されることで住民に誇りが生まれ、来訪神行事の伝統を続けていくモチベーションになれば」と期待を込めているということです。

 今回の日本「来訪神」の提案趣旨について、文化庁では以下の3項目の説明をしています。

  1. 正月など年の節目を迎えるに当たり、仮面や蓑(みの)笠(かさ)などを身につけて来訪神に扮(ふん)した者が家々を訪れ、子供や怠け者を戒めたり、災厄をはらったりし、人々に幸や福をもたらす行事である
  2. 来訪神行事は伝承されている各地域において、時代を超え、世代から世代へと受け継がれてきた年中行事であり、それぞれの地域コミュニティでは、来訪神行事を通じて地域の結びつきや世代を超えた人々の対話と交流が深められている
  3. 来訪神行事のユネスコ無形文化遺産代表一覧表への記載は、地域の人々の絆(きずな)としての役割を果たしている無形文化遺産の保護・伝承の事例として、国際社会における無形文化遺産の保護の取組に大きく貢献するものである

 一方、デジ研の国際調査により、日本のオニなどの来訪神行事と類似の民俗行事が、欧州各地など世界的に同時期に行われていることが判明しています。つまり、日本の来訪神行事は、それぞれの地域の人々の絆(きずな)としての役割を果たしているばかりではなく、地域の人々と、世界の人々との間には「時代と地域を超えて、仮面の来訪神によって結ばれた地球規模の絆」が存在している可能性があります。
   日本のオニの来訪神行事がユネスコ文化遺産となれば、世界の来訪神、あるいはオニ文化などの起源について研究が進み、新たな国際文化交流のきっかけになることも期待できそうです。

 デジ研の国際調査で明らかになった新年新春行事のユネスコ文化遺産登録はそればかりではありません。イランなど中央アジアの春分元日行事である「ノウルーズの祝祭(Nowruz)」は2009年、ユネスコ無形文化遺産に登録されています。韓国の小正月行事である「チュルタリギ(大綱引き)」と「カンガンスルレ」(農楽踊り)」もユネスコ無形文化遺産に登録されています。

 しかし、「どんど焼き」など日本の正月行事も、ノウルーズ、チュルタリギ、カンガンスルレとほぼ同様の文化的価値をもっています。
 日本政府は正月行事のなかでも特に来訪神行事だけを取り上げて、ユネスコ文化遺産に登録しようとしていますが、実際には、イランの「ノウルーズ」と同様に、日本の大正月・小正月行事全体が、世界に誇れる無形文化遺産としての意義をもっているとみることができます。時代や地域を超えた正月行事の大きな流れの中で、奇抜な格好をした来訪神行事だけが特別の意義を持っているのではありません。政府は個別の一本の木だけをみて、森全体の価値を見失っているのかもしれません。

 私たちは、地域の民俗文化行事の研究について、狭い視野、狭い知識によって、ややもすると低い評価をしがちですが、実際には地域文化の深層に人類の共通価値が存在し、民族、言語と国境の壁、さらに宗教の壁を超えてお互いにメッセージ(具体的には無病息災、家内安全、五穀豊穣)を共有していることがデジ研の小正月行事全国・国際調査で明らかになってきました。
 現代の世界は、宗教や民族の壁の中で破壊と混乱に満ちており、解決の糸口も見つかっていません。しかしながら、本調査により世界各地で明らかになった「新年、新春を迎え人々の安全健康、コミュニティの繁栄と持続を願う祈り」を再評価することで、少なくともユーラシア大陸の人々は、一つになれる(UNITY)可能性があります。私たちは物事の価値判断のパラダイムを大きく転換するときを迎えているのかもしれません。
 詳細記事は別項目の「考察編」に掲載しました。
 (2016年12月18日更新)

 ○欧州の“来訪神”に関する調査結果について ユネスコ文化遺産も2件

 デジ研の2016年調査では、文化庁と関係7県の9自治体が、全国各地の「来訪神行事」を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に一括登録を申請する準備をすすめているとの文化庁発表を基に、「日本の来訪神」と「世界各地の類似行事」との比較を行いました。
 その結果、ヨーロッパ各地で日本のトシドン、ナマハゲ、アマハゲなどと類似する「来訪する仮面、仮装の異人(マレビト)または精霊(せいれい)」(キリスト教圏では神と呼べない)の行事が、年の暮れや立春ごろのカーニバルで行われていることを確認しました。これらの来訪行事は、冬や悪霊を追放し、春の到来を告げ、その年の招福を願うために行われています。

 ヨーロッパでは、冬至、クリスマスから新年にかけてのエピファニー(公現祭)のころ、あるいは立春ごろに行われるカーニバル(謝肉祭)で、告解の火曜日またはマルディグラ(Shrove Tuesday, or Mardi Gras)の行事として、野獣の精霊、悪魔などの姿でふさふさの毛皮やわらの衣装を身につけた仮面・仮装の異人が街に現れ、中心通りを練り歩く来訪行事(家庭を訪問する地域もある)が行われます。これらの異人(オニ)の民俗行事は、クランプス(Krampus)、クケリ(Kukeri)、バブゲリ(Babugeri)、ブショー(Busós)、ハバーガイス(Habergeis)などと呼ばれ、各国の伝統文化行事となっています。

 またインドネシアでは、バリ島の新年行事として街にオニが来訪する「オゴオゴ(ogoh-ogoh)」が行われています。これらの世界の「来訪神行事」は、開催時期、趣旨や仮面・仮装の形態が類似であることが確認できました。

   また、以上の世界の仮面・仮装のパレードがただの野卑な地域文化ではなく、国際的な文化遺産としての価値があることが認められ、2009年にハンガリーの「ブショーヤーラーシュ」、日本の「甑島のトシドン」の2件、2015年にオーストリアの「エブラルンのクランプス」の1件が、それぞれユネスコの無形文化遺産に登録されています。

   調査結果からは、日本の来訪神行事は、日本固有の無形文化遺産ではなく、欧州などの仮面・仮装の異人・精霊来訪行事と起源を共有している可能性があることが明らかになりました。フランスの写真家シャルル・フレジェ氏の作品「獣人(ワイルドマン)」「妖怪の島」によると、日本の来訪神と欧州の仮面、仮装獣人は、識別が困難なほどよく似ています(下記トピック参照)。
 このことは、地域文化への理解を根本的にひっくり返すコペルニクス的転回をもたらすものです。つまり、日本が鎖国をしていた文明開化以前の時代に、閉ざされた(と思われる)辺鄙な地域で発生したオニの土俗行事が、実は欧州をはじめ世界的な土俗行事として同じ形態で、共時性をもって行われているということは、いったい何を意味しているのでしょうか。しかも、鎖国時代にあって、日本と遠く離れた欧州にどのような民俗文化のコネクションが存在していたのか現時点では全く不明です。
 しかし、調査データの分析から仮説として言えるのは<古代のある時、世界各地で角を持ち、ふさふさの衣装の悪魔またはオニがやってきた。困った人類が、それら悪魔の一部と取引して、“悪魔払い”を委託した>という記憶を共有しているのではないかと推測ができそうです。
 驚きの調査結果の概要を下段の考察編トピックスに掲載しました。
 (2016年3月5日更新)

○日本や世界各地の仮面神や鬼が集結!東京で写真展

 東京・銀座メゾンエルメス・フォーラムは旧暦正月の2016年2月19日から5月15日まで、フランスの写真家シャルル・フレジェ氏(Charles Fréger)の展覧会「YÔKAÏNOSHIMA」(妖怪の島)を開催しました。フレジェ氏は、近年の代表作である「WILDER MAN」シリーズ(2010~2011年)で、ヨーロッパ各地の伝統的な祝祭の儀式に登場する、熊や山羊、悪魔に仮装した「獣人(ワイルドマン)」の姿を収めています。
 このヨーロッパ全土に残る冬の祝祭には、デジ研の小正月行事世界調査でも明らかになったように、日本の正月の来訪神の文化とも共通点が見られることから、フレジェ氏は日本を訪れて新たな展開を試みました。それが「YÔKAÏNOSHIMA」となって作品化されました。
 フレジェ氏は、日本列島を北から南まで58ヶ所で写真取材を行い、秋田県男鹿のナマハゲなど日本固有と思われる仮面神や鬼たちの姿を写真に収めました。
 しかし、季節のめぐりのなかで、田畑や山々、森林、海辺から現れる世界各地の「来訪神」と比較して見ると、日本のナマハゲ、アマハゲなどは決して日本固有の来訪神ではなかったことに衝撃を受けるでしょう。彼らは、世界共通の来訪神グループの“東アジア地区メンバー(あるいは祖先を共有する親族)”であることがビジュアル的に証明されているからです。
 では、ナマハゲなどの来訪神が日本固有のものではないとすれば、フサフサの毛をまとった彼らは、いったい世界のどこからやってきたのでしょうか? さらなる重大な謎が生まれています。写真からは、人類の共通の祈りの姿をかいま見ることができ、来訪神のルーツを探るうえで興味ふかい企画展となっています。
■ 入場料:無料
■ 会場:銀座メゾンエルメス フォーラム (中央区銀座 5-4-1 8 階 TEL: 03-3569-3300)
■ 期間:2016年2月19日~5月15日 ■ 主催:エルメス財団
■参照サイト 世界の仮面・仮装の「獣人」を紹介するシャルル・フレジェ氏公式サイト「ワイルドマン」。

○韓国の小正月行事「チュルタリギ」などユネスコ文化遺産に登録 日本にも同様の綱引き行事

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2015年12月2日、韓国の小正月行事「チュルタリギ(줄다리기/綱引き)」をユネスコ無形文化遺産に登録しました。「正月の綱引き」は、豊作を祈願する行事として 東アジアの稲作文化圏で行われている民族遊びで、共通の文化をもつベトナム、フィリピン、カンボジアそして韓国の4カ国が協力して申請し、今回の登録が決定しました。

 正月の綱引きは、集落の住民がふた手に分かれ、太い綱を引っ張り合う行事で、韓国のチュルタリギでは、農村で1年の豊作を祈願する伝統行事として行われてきました。
 チュルタリギに使う綱はアムジュル(雌索)とストジュル(雄索)になっており、アムジュルとストジュルの頭の部分は、男女の性器(陰陽)を象徴したとされています。村の人々は、このチュルタリギをすることで、心を1つにし、新しい農耕の1年に向けての決意を新たにするといわれます。また、チュルタリギを通じて、村の年長者たちは若者を村の共同体に馴染ませ、結束と団結により、働き手の意欲を向上させる意味もあるようです。ユネスコは、稲作文化圏におけるチュルタリギの伝統文化的価値を高く評価し、人類の無形文化遺産に指定したということです。

   この小正月行事チュルタリギ(綱引き)は、日本でも小正月行事として行われていることがデジ研の調査で明らかになっています。
 秋田県大仙市字刈和野の「刈和野の大綱引き」は、日本の小正月行事を代表する国指定重要無形民俗文化財ですが、韓国のチュルタルギと同様に男女綱を交合させ、農耕儀礼として綱引きが行われています。この2つの行事は間違いなく、起源を共有する類似の行事と呼んでよいでしょう(詳細は、行事データ一覧を参照)。また、旧正月元日に沖縄県竹富町黒島でも伝統行事の大綱引きが行われ、豊作豊漁を祈願します。これも韓国の無形文化遺産と類似の行事としてよいでしょう。
 当然のこととして、日本の綱引きもアジアの稲作文化圏の「小正月行事綱引き」として、ユネスコ無形文化遺産に登録されるべきものです。しかしながら、日本の綱引き行事が文化遺産から排除されているのは、ユネスコの調査不足、または日本政府の認識不足のためと思われます。もしユネスコが真理を追究する機関であるならば、登録審査結果は是正されるべきであり、そのために本調査が活用されれば幸いです。

【日韓の小正月・綱引きのイメージ比較】

韓国の小正月行事チュルタリギ(줄다리기)=ユネスコ無形文化遺産


日本の小正月行事綱引き
(以上2点出典google画像検索結果)

 小正月行事における日本と韓国の類似行事の存在は、綱引きばかりではありません。デジ研の世界調査では、日本と韓国の小正月行事は、祭礼全体の形態も趣旨も類似の「春の農耕儀礼」であり、さらに北欧の新春行事「メイポール」、英国の新春農耕儀礼「インボルグ、ベルテーン」、イタリアの新春農耕儀礼「ピニャルル」にも類似していることが判明しています。
 また、韓国の小正月行事でもある「カンガンスルレ」(農楽踊り)は2009年、ユネスコ文化遺産に登録されています。カンガンスルレは韓国固有の伝統遊びで、タルジプ焼き(日本のどんど焼き)の夜、集落の女性が手をつないで焚き火の周りに丸く輪を作り、歌に合わせてぐるぐる回りながら踊ります。
 このほか、韓国ではソルラル(旧暦1月1日)、端午(旧暦5月5日)、秋夕(旧暦8月15日)などの韓国の年中行事でカンガンスルレが行われます。稲作文化に由来するカンガンスルレは昔ながらの重要な風習で、踊りをたやすく覚えることができ、協調性・平等・友情が感じられる貴重な民俗芸術とされています。
 イタリア・サルディーニャでは、新年の聖アントニオ・アベーテに訪れる野獣の姿をした異人、精霊に仮装した人たちが町の広場で、焚き火の周りで歌に合わせて踊る姿が見られます。
 日本では、ユネスコの無形文化遺産に登録されている神奈川県三浦市三崎の女子による伝統芸能「チャッキラコ」が、カンガンスルレと類似の小正月行事と見ることができます。

   デジ研調査の事例データは、日本国内の山間僻地のさまざまな民俗行事の研究が、国内に視野を限定されるべきではなく、小正月行事については、少なくとも東アジアの農耕文化というグローバルな視野の中で調査研究されるべきであることを強く示唆しています。
 つまり、日本国内にあって、どんな辺鄙な地域の文化であっても、その形成の背景には国境や言葉の壁を超えた大きな文化基盤あるいは意識の基盤が、民衆によってシェアされている可能性があるということです。
 事例データの分布は、どうもユーラシア大陸の東西両端の農耕牧畜地帯に分布しているように見えます。この文化交流がどのような方法で達成されたのかについて、現時点では全く不明です。しかし、上記の国際的調査データの類似性は、たまたまとか、偶然のレベルを超えていて、様々な要素が重層的に一致しているのです。調査データは、民俗学研究の視点の転換と調査フィールドの国際的な拡大を求めるものです。

 (この項韓国観光公社、駐大阪韓国文化院、wikipediaなどによる)

○小正月行事「どんど焼き」研究成果を平成27年2月21日、甲府・山梨県立図書館で発表しました。

 NPO法人地域資料デジタル化研究会は、2月21日(土)、甲府市の山梨県立図書館(JR甲府駅前)で「冬のデジ研まつり2015」『NPO、だから。』を開催しました。
 このイベントで、午前10時から、井尻事務局長が正月行事「どんど焼き」全国、海外調査の概要について報告いたしました。小正月火祭りに関する日本、韓国、スウェーデンの相関現象については、スウェーデン出身の本研究会職員オーレ・ベリーも交えて研究報告し、会場の参加者からは鋭い質疑もあり有意義な時間を過ごしました。

日時: 平成27年2月21日(土曜日)10:00~
場所: 山梨県立図書館 多目的ホール
主催: 特定非営利活動法人地域資料デジタル化研究会
冬のデジ研祭り告知案内チラシはこちら

○小正月行事「どんど焼き」研究データを活用する教材化プランを発表しました。

 デジ研では、小正月行事の全国調査と分析成果を学校の学習活動に役立てていただくため、27年度版では「学習指導要領・郷土学習としての「小正月行事・どんど焼き」の教材化」について、教育現場での活用方法に関する記事を掲載しました。
 小正月行事を道徳教育の「主として集団や社会とのかかわりに関すること」の地域教材とすることを企画し、学習計画案を本サイトで配布しております。

 学校教育で「郷土学習」に使われる場合は、指導プランがございますので、ダウンロードしてお使いください。著作権フリーですので、自由に加工することができます。許諾も不要です。(本サイトの全国調査公開データと併用すると効果的です)
 小正月行事の郷土学習教育における教材化プランはこちらからダウンロードできます。(PDF文書)

○日本人はなぜ旧正月を祝わないのか―中国メディア報道 

 2015年2月19日配信の「Record China.」によると、中国メディア・捜狐は、中国で2月19日から旧正月春節(しゅんせつ、中国語: 春节 Chūnjié チュンチエ)を迎えることに関連し、「日本人はなぜ春節を祝わないのか」と題する記事を掲載しました(18日付)。
 アジアの多くの国、韓国やベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシアでは旧正月を盛大に祝う伝統があります。旧暦の新年を祝うという伝統を守っていないのは日本だけだとしています。
 その原因として、日本も、明治維新の前までは、旧暦で正月を祝っていましたが、政府が1872年12月3日をもって73年1月1日に改め、西洋暦に改暦したことを挙げ、それとともに、日本人は、古代からの伝統も変えてしまったと指摘しています。
 また、Record China.は2月19日配信で、「日本では新年の雰囲気を感じ取ることができない」として、「日本人妻の見た日本」の記事のなかで、「日本では年越しそばやおせち料理を食べる風習があり、門松を飾る伝統もあるのだが、今では門松を飾る家は少なく、おせちを作ることはおろか、買って食べる人も少ない」と紹介し、街の風景についても「非常に静かでいつもの土曜日や日曜日と大差ない」と、日本人の正月を祝う季節感の喪失傾向を紹介しています。

 デジ研の全国調査によると、日本国内でも、旧暦正月「春節」を祝う行事が、長崎県長崎市、神奈川県横浜市中華街で盛大に行われています。
 また秋田県仙北市西木町では2015年2月10日夜、武者絵や美人画が描かれた巨大な紙風船を打ち上げる小正月行事「上桧木内の紙風船上げ」が行われました。これは、中国の春節(2015年は2月19日~)を祝う伝統行事・天灯(スカイ・ランタン)と同じ趣旨、形態の行事ということができます。
 ランタンフェスティバルは長崎、横浜でも行われています。

 また、2015年の調査では、秋田、青森県で旧暦の小正月を祝う伝統行事が盛大に行われています。2月14、15日に秋田県大館市大町の小正月行事「大館アメッコ市」、2月11日に秋田県大仙市花館地区の小正月行事「川を渡るぼんでん」、2月14日~16日に秋田県横手市の小正月行事「かまくら」、2月17~20日に青森県八戸市の国の正月行事「八戸えんぶり」が行われ、それぞれ地域の一大観光行事にもなっていて、地域への経済波及効果も大きいようです。。また、3月6日に沖縄県宮古島市の「あの世の正月『ジュウルクニツ(十六日祭)』が行われ、先祖信仰の小正月行事として、無病息災や子孫繁栄を祈っています。これらは、旧暦正月を祝う行事と考えて良さそうです。

 ○東日本大震災はどんど焼きにも打撃

 2012年の小正月行事では、東日本大震災による福島第一原発事故の影響を懸念して、福島県や近県で、どんど焼きを中止する自治体が相次ぎ、伝統行事の開催にも影響が出ました。火祭りの小屋作りに使うワラやカヤ、竹、小枝などが原発から飛散した放射性物質に汚染されている恐れがあるからという理由からでした。
 栃木県那須塩原市では、2011年12月下旬、しめ飾りなどと一緒に燃やす小枝などが放射性物質に汚染されている恐れがあるとして、市の施設での「どんど焼き」を認めないことを自治会などに通知しました。市の通知を受けて、市内でどんど焼きの届け出があった22件のうち9件が中止を決めたということです。小学校校庭で予定していたどんど焼きに代わって公民館で小正月まつりを開き、子どもたちにだんごや甘酒を振る舞ったということです。また、大田原市消防本部によると、同市内でも届け出があった10件のうち4件が中止になったということです。
 その後、放射性物質による空間放射線量率が低下してきたことから、那須塩原市では2014年1月14日、3年ぶりにどんど焼きが復活しました。2014年には伝統行事の復活を望む市民の要望を受けて(1)地域住民の十分な理解を得る(2)材料はことしの稲わらなどを使う(3)灰は市クリーンセンターに持ち込み処理する(4)実施前後で空間放射線量率を測定し、周囲に影響がないことを確認する-の4項目を条件に3年ぶりにどんど焼きの再開を認められました。

 宮城県山元町高瀬笠野の八重垣神社では、東日本大震災の津波で流失した社殿などが復興され、小正月の伝統行事「どんと祭」が3年ぶりに復活しました。気仙沼市弁天町では住宅が流されて壊滅的な被害を受け、一景島神社のどんと祭では、住民らは遠方の仮設住宅などから車で訪れる例が見られます。

 こうした事例では、どんど焼きが地域集落の住民の結束を固め、地域集落の「持続可能性」(サステナビリティ)を守る働きを持っていると言えるのではないでしょうか。  (この項ヨミウリオンライン・ヨミドクターなどによる)(2014年2月6日更新)

日本と世界のどんど焼き、関連行事調査結果一覧表はこちらをクリック

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(調査・データ編集:NPO地域資料デジタル化研究会デジタルアーカイブ班 担当・井尻俊之)

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